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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と友達の章
32/102

Episode29 打ち合わせ

「明日、一人で留守番しててくれる?」

「構わないが、どこかに行くのか?」

「来週また高校でパーティがあって、そこで歌うことになったの」

 だから明日は打ち合わせだという師匠はとても嬉しそうで、私はすぐに頷いた。

 翌日は店の休業日だったので、師匠が出かけた後、私は師匠が作ってくれたハンバーガーを食べながら夜を過ごしていた。

 前に師匠はこの家のことを無駄に広いと言っていたが、確かに夜一人でいるとその言葉の意味がわかる。

 家の中は酷く暗く、そして静かだった。 

 もちろん私が住んでいた城の方が更に闇が深く、無音になるときも多かったが、あのころはそれを気にしたことはなかった。

 なのに今、一人であることが何故だか落ち着かない。

 ホラー映画を見たわけでもないのに、沈黙と闇が恐ろしいとまで思ってしまう。

 ジェイソンさんがでてくるならまだいい。

 だがこの闇が私の世界の闇と繋がり、来たときのように突然元の世界に戻されたらと思うと、たまらなく恐ろしくなったのだ。

 人々に闇と恐怖を植え付ける為生み出された私が、逆に闇を恐れるなどかつては考えられなかった。

 けれどハンバーガーも師匠もない生活に、今の私はきっと耐えられない。

 そう思ううちに恐怖は広がり続けたが、もちろん回避の仕方など知るよしもなかった。

 そんな時、私の脳裏によぎったのは師匠の言葉だった。

『子どもの頃、暗闇が怖くなる度クローゼットに隠れてたの。毛布と懐中電灯を持って』

 残念ながら懐中電灯は見あたらなかったので、私はハンバーガーを片手に階段下にあるクローゼットの中に転がり込んだ。

 だがしかし、クローゼットは想像以上に狭かった。そしてやっぱり暗い。

 逃げ込んだはずが逆に追いつめられたような錯覚に陥り、それがホラー映画を連想させ、むしろ非常に恐怖感を煽られる。

 出よう。

 すぐに出よう。

 そう思って扉に手をかけると、何故だかノブが回らなかった。どうやら慌てて駆け込んだ拍子に扉が壊れてしまったらしい。

 叩いても蹴ってもドアはびくともしなかった。

 仕方なく我が魔剣で叩ききろうかと思ったが、狭いクローゼットの中では上手く身動きが取れない。これは確実に扉以外の物を破壊してしまう気がする。

 そうしたら師匠は絶対に怒る。そして暗闇と師匠の怒りを比べた場合、後者の方が正直恐ろしい。

 仕方なく、私は師匠が帰ってくるまでクローゼットの中で膝を抱えることになった。

「……あんた、何でそんなに馬鹿なの?」

 帰宅した師匠が放った問いには、答えられなかった。


お題の提供は『6倍数の御題様』

http://www3.to/6title


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