Episode28 得意料理
今日もハンバーガーを食べていると、師匠が哀れむような目を私に向けた。
「あんたさ、毎日毎日ハンバーガーばっかり食べててあきない?」
「ポテトも食べているぞ」
それに師匠から貰った血も飲んでいると答えれば、師匠は呆れた顔をする。
「売れ残ったハンバーガー食べてくれるのは嬉しいけど、やっぱり体に良くないわよ。肥満になるし」
「ひまん?」
「太るって事?」
「大丈夫だ、最近は家から店まで走っているしな」
「何キロあると思ってんのよ…」
「魔王の脚力にかかれば、あっという間だ」
だから肥満も問題ないと言ったが、やはり師匠は不満そうだった。
「あんたがもし、他のものも食べたいって言うなら作ってあげてもいいのよ。一応ハンバーガー以外にも、得意料理あるし」
「ポテト?」
「ジャンクフード以外も作れるわよ!」
叩かれた頭をさすりながら、私はハンバーガー以外の料理について考える。
「ピザとホットドッグもジャンクフードか?」
「そうよ」
「ポテトチップは?」
「アレはお菓子」
即答され、私は困ってしまった。
実を言うと、私はあまり料理を名を知らない。
この世界に来る前は食事を取る習慣がなかった上に、こちらに来てからはハンバーガーに夢中になりすぎて、他の物に興味がわかなかったのだ。
それを素直に告げると、先ほどは叩いた頭を、師匠が優しく撫でてくれる。
「じゃあこれから見付けていきましょう」
得意料理は多いのよと微笑まれると、何故だか胸の奥がツンと痛くなる。
「師匠は優しいな」
「料理するのが好きなだけよ」
「たしかに、師匠は厨房に立っていると幸せそうだ」
私が微笑むと、何故だか師匠は私から顔をそらす。
「最近は、他にも楽しいことあるし……」
「歌っているときか?」
「餌付けしている時よ」
家畜でも飼っているのかと聞いたら、大きな犬がいるという。
魔王の目にも映らない犬とは、魔獣かなにかだろうか?
お題の提供は『6倍数の御題様』
http://www3.to/6title