Episode02 日課
この世界にきてから、私の日課はダイナー『ROUTE66』の掃除となった。
未だにこうして生きていることはもちろん信じられないが、一番信じられないのはこの私が、魔王であるこの私がたった1人の少女に虐げられていることである。
「モップがけ終わったら、トイレ掃除もお願いねー」
納得いかない。たった一回の無銭飲食でもう1週間もこき使われている。
その上私の素性を話したというのに全く信じるそぶりもない。
これは近々、ダイナーの看板を私の邪眼ビームか魔剣で粉砕してみせねばなるまい。そうすればさすがの少女も私の恐ろしさを思い知るであろう。
そう考えたとたん、私は思わず魔王的な不適笑いを浮かべてしまう。虐げられ続けた所為かドSスイッチが入ってしまったようだ。
がしかし、それを少女は鋭い洞察力見とがめた。見とがめた上に、舌打ちまでした。
「ほら魔王! はやくしないと、バーガーにチーズ挟んであげないからね!」
それは困る。私はハンバーガー、それもチーズが挟んである物が大好物なのだ。虐げられるのは不快だが、チーズバーガーと等価交換なら致し方ない気もする。
そもそも、私には行くところもないのだし、掃除だけで衣食住がまかなえるのなら安い気もする。
と納得のための言い訳を自分に繰り返し、私はドSスイッチを切った。