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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と友達の章
26/102

Episode23 お祝い

 夏が終わりにさしかかり、ほんの少しだけ気温が下がった秋の初めのある日、店にはたくさんの客が押し寄せていた。

 突然の大混雑に私が慌てている横で、師匠は少しだけ機嫌が良かった。

 見れば、客達は皆師匠に綺麗な包装紙で包まれた箱を渡している。

 箱の大きさは様々だが、それを貰った師匠はとても嬉しそうだった。

 そして皆こう言うのだ、「はっぴばすでー」と。

 客が帰り、師匠と共に箱を車に積みながら、私は「はっぴばすでー」について尋ねてみた。

「誕生日なの、今日」

「誕生、と言うことは師匠が生まれた日か?」

 本当に無知なのねと笑う師匠に、私はようやく事の重大さに気付いた。

 今日は師匠が生まれた日なのだ。確かにそれはめでたい。祝うほどめでたい。

「そうか、これは師匠が生まれたことに感謝する人々からの贈り物か」

「誕生日にはプレゼントを贈ったり、ケーキを食べたりして祝うのよ。パーティとかを開いて盛大に祝う人もいるわね」

 だと言うのに、私は今日配膳しかしていない。贈り物もない。

「そんな、この世の終わりみたいな顔しないでよ。教えてなかったし、期待もしてなかったから」

「師匠には世話になっているのに、本当に申し訳ない」

 そう思ってポケット漁るが、勿論何もない。

 家に帰ったところで、プラモデル以外に私の私物はないし、そもそもあれは師匠の父親の物だ。

「心臓とか眼球なら取り出せるが、年頃の女性はそう言う物を貰って嬉しいか?」

「いや、激しくいらない」

「食べたら不老不死だと言われているぞ」

「いや、激しくいらない」

 困った。完全に手詰まりである。

 そのとき、贈り物に撒かれたリボンに目が行った。やはりこういう物を私も上げたい。

 師匠の生まれた日を、私はどうしてもお祝いしたい。

「やはり、これしかあるまい」

 私はリボンを抜き取ると、それを自分の頭に結んで師匠の手を取る。

「…もしかして、プレゼントは自分とかアホなこと言おうとしてない?」

「師匠はエスパーか」

「いらない」

「眼球も臓物も脳みそも好きにして良いのだぞ」

 かつて多くの勇者が奪おうとした魔力の結晶詰め合わせである。大盤振る舞いである。

「我が相棒を貸す。だから好きなところを持って行ってくれ」

「だから、激しくいらない」

「背骨なんてどうだろう。お肌にも良いぞ、きっと」

「……もういい。想像してた展開とも違いすぎるし」

「想像?」

 尋ねると、師匠は何故か少し赤くなって私を殴り飛ばす。

「好きにして良いって、内臓取り出して良いとかそう言う事じゃないでしょう普通!」

「じゃあどうすればいい? 師匠のためだったら何だって差し出すぞ」

 私が引き下がる気配を見せないでいると、師匠は私の頭からリボンを外した。

「好きにして良いって言うなら、五体満足で私の側にいなさい」

「それで良いのか?」

「あとそうね、家に帰ったら私のためにバナナシェイク作ってよ」

「何杯でも作る! 100杯でも1000杯でも」

「そんないらない」

 即答だった。

 けれど否定しながらも、バナナシェイクは楽しみにしていると言われた。

「師匠、はっぴばすでー」

 それを言うなら、ハッピーバースデイ。そう告げた師匠に、私はハッピーバースデイと繰り返した。

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