Episode22 アイコンタクト
「最近、お前さん達息が合ってきたよな」
ある夜、ダイナーを訪れたスティーブが私を呼び止めそんなことを言った。
「でもまだ、よく怒られる」
それに最近、仕事中はあまり言葉を交わさなくなった。
「それはな、言葉が無くともお互いが繋がってるからだ」
「どういう意味だ?」
「言葉だけじゃなく、人間ってのは目線でも会話が出来るんだぜ」
言われてみれば、言葉数は少なくても師匠と目が合う事は多い気がする。
確かに、目が合うことで師匠の考えが読めることも沢山あった。
皿を片づけろ、水を運べ、床にモップをかけろ、トイレ掃除に行ってこい等々、師匠の言いたいことは確かに目を見ればわかる。
そして師匠も、助けを求める視線を送ればすぐに飛んできてくれる。
私にとって、人と目を合わせることは人を殺す事と同意義だったが、こちらの世界ではそうとも限らないらしい。
「目で会話をするのか、人間は本当に器用だな」
「安心しな、お前さんもちゃんと出来ている」
特に師匠との間ではそれが出来ているらしい。
それが嬉しくて、私はカウンターの向こうの師匠に目を向けた。
すると師匠も、こちらに気付いて顔を上げた。
たしかに、目が合うととても幸せだ。
幸せすぎてちょっと感動していると、ついついリミッターが外れてしまった。
物凄い爆音がして、師匠の前のカウンターから突然火の手が上がった。
「すまない、久しぶりに目に力を入れたら邪眼ビームが出てしまった」
それから1週間ほど、師匠は私と目を合わせてくれなくなった。




