Episode20 リーダー
私は恐怖映画というのを甘く見ていた。
すさまじく甘く見ていた。
「次どれにする? 今の奴の続き? それともエルム街の悪夢いってみる?」
楽しそうにビデオを選ぶ師匠に、私はもはや息も絶え絶えである。
「恐怖映画というのは、なんだか、胃と胸に来るのだな……」
「なに、怖いの?」
「ジェイソンさんを甘く見ていた。我が魔剣でも、あのチェーンソーに太刀打ちするのは難しいだろう」
「じゃあ、続編行こうか」
人の話を全く聞いていない。
と言うか聞く気もなかったのだろう。尋ねる前から、師匠はジェイソンさんに顔がかかれたビデオを持っていた。
「師匠は恐怖映画が好きなのか?」
「スカッとするじゃない、いけ好かないイケメンやチアリーダーがズタズタにされるのって」
「ちありーだー?」
「高校で幅をきかせている女の子達よ」
「強いのか?」
「ある意味ね。高校では、胸が大きくて、ポンポン振りながらスポーツ部の連中とエッチしてると最強になれるの」
「それだけでいい顔ができるのか? 高校とは変わっているな」
「でも、あんただって胸が大きくて可愛い子が好きでしょう?」
とんでもない。
「そう言う女子と一緒にいるとジェイソンさんに狙われるのだろう? 絶対に嫌だ」
私が真面目に力説すれば、師匠は笑いながら私の横に座る。
それから師匠はリモコンという遠隔操作装置で恐怖映画をスタートさせる。
恐怖の再来である。
「師匠」
「ん?」
「手、握っても良いか?」
「あんた、本当に魔王なの?」
「魔王だって、勝てないものはある」
伝説の勇者とジェイソンさん。
この二人の前では、魔王なんてただのゴミだ。
特にジェイソンさん、彼は本当に怖い。