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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と師匠の章
21/102

Episode19 美男子

 最近師匠の機嫌が悪い。

 毎日私の顔を見ると舌打ちをするのだ。

 正直傷つく、とても傷つく。

 今日も朝から3回も舌打ちをされた事に落ち込んでいると、女性客達が慰めの声をくれた。

 そう言えば師匠に舌打ちされる一方、店の客には優しくされる事が多くなった。特に女性の客に。

 今日も20回ほど週末の予定を聞かれた。

 週末は、師匠とビデオを見る予定だと告げると何故だかとても残念がられた。

 やはり、休日の夜に恐怖映画を見るなんて、今時の若者は好まないのだろうか……。

 最近疲れている師匠を癒やす為に、無い知恵を絞って企画したイベントなのだが、実は良い迷惑だったのかも知れない。

 もしかしたら、舌打ちも原因なのかもしれない。

「師匠、師匠はジェイソンさんはお嫌いか?」

 厨房に飛び込むと同時に尋ねれば、またアホなことを言い出した、と言う顔で師匠が私を見る。

「順序立てて話せ」

 言われるがまま、舌打ちで傷ついていた事から厨房へ駆け込むまでの心情を伝えれば、師匠は少しだけばつが悪そうな顔をする。

「別に、映画は嫌じゃない」

「じゃあ、何が嫌なんだ?」

「……あんたは、本当にそれでいいの?」

 何がだと尋ねると、師匠はパテを焼きながらちらりとこちらを伺う。

「今週の日曜日、またうちの高校でパーティがある。店に来てる子達は、みんなそれに魔王と行きたいのよ」

「師匠はまた歌うのか?」

「今回は歌わない」

「なら行かない」

 即答すれば師匠は驚いた顔で私を見た。

「日曜日は師匠と映画を見る。そう約束した」

「約束なんて律儀に守らなくて良いよ。もし行きたきゃ、行けばいい」

「でも、私は師匠との約束は守る」

 何故と尋ねられた。

 何故と言われても、守りたいから守る以外に理由はない。

 それを素直に告げれば、師匠はホッとした顔で私から顔を背けた。

「……舌打ちとかして、ごめん」

「そうだ、なぜ師匠は舌打ちをしたのだ? 映画が嫌ではないのだろう?」

「あんたがもう少し不細工ならって、思ったの」

「なら、そこの包丁で顔をぐちゃぐちゃにするか?」

「そう言うのは映画の中だけで十分」

 それにこの街一の美男子の顔をグチャグチャにしたら、街中の女の子達が泣くだろうと、師匠は笑う。

「師匠も泣くのか?」

 むしろ清々する。

 そう言う師匠の笑顔は、確かに清々しかった。


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