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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と師匠の章
17/102

Episode15 タイミング

「いい?肉をひっくり返すタイミングは香りと音で計るの」

 鉄板の前でパテをひっくり返しながら、師匠は額の汗を拭う。

「目で肉の焼き加減を見るのもちろん大事、だけど中までは見えないでしょう」

 師匠の言葉に、私も自分の前のパテをひっくり返す。

「今は、なにを基準にひっくり返した?」

「香りだ。肉の焼ける香りがこちらまで香ってきたので返した。少し早い気もしたが、師匠はいつもはやめだから」

「何でだと思う?」

「焼きすぎるよりは生焼けの方が後で調整がきくかと」

 師匠が笑顔で頷いた。

「私だって毎回完璧じゃない。だから最後まで気を抜かないで、失敗したと思っても慌てないのが大事」

 慌てない事は得意だ。昔から、良い意味でも悪い意味でも動揺しない魔王だと言われてきた。

「でもホント、あんた随分上手くなった」

「師匠に褒められると、なんだかむず痒いな」

「これは、私もそろそろお役ご免かな」

 師匠の言葉に、何故だか突然喉のあたりがくっと詰まった。

 剣の師匠に免許皆伝を貰ったときは何の感動もなかったが、ハンバーガーを前にすると私は涙もろくなるらしい。

「ちょっと、早いわよ泣くの!」

「自分でも驚いている。私は涙という物に縁がないと思っていたのだが」

「っていうか、無表情のまま泣くのやめて。なんか怖い」

「一応、多分これは感動の涙だと思う」

「ならそう言う顔しなさい」

「そう言う顔とはどういう顔だ」

「そういえば、感動したときの顔って説明しづらいわね」

 それから彼女は私の顔を見上げて少し考え込む。

「とりあえず笑っておけば?」

 言われるがまま笑った。

「だめだ、泣いたままだと今度は気持ち悪い」

 そう言うと師匠は焼いていたパテを持ち上げ、それから置いてあったバンズにそれを挟んだ。

「とりあえず、これ食べて」

 言われるがまま、今度はハンバーガーにかぶりついた。

「うん、あんたはハンバーガー食べてるときが一番いい顔してる」

 師匠はそう言うと、私の涙と口に付いたケチャップをぬぐい取った。


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