Episode14 気心の知れた仲
朝起きると、師匠が私にメモを押しつけてきた。
「今日から私学校なの。授業はないからお昼過ぎにはもどってくるから」
「ということは、店の方は午後からか?」
「うん。学校が始まったら夕方からになるとおもう」
「なんなら、先に行って開店の準備をしていようか?」
「でも車運転出来ないでしょう」
「安心しろ。こういう時のために、色々と教わったのだ」
得意げに言うと、私は我が相棒魔剣アンティベラムを呼び出す。
『例の奴ですか』
「たのむ」
私はいうと、我が相棒を床に突き立てた。
その直後、相棒は一台のバイクへと変化する。
「これは・・・」
「運転の仕方はスティーブに教えて貰った」
「あんた達、いつの間にそんな仲に」
「師匠の寝顔の写真を渡したら、私の事情を全て受け入れてくれたぞ」
なぜか、そこで殴られた。
「変な奴と心を通わせおって・・・」
「そうなのだ! スティーブは良い友人なのだ! 私に、これほど良くしてくれる友人は未だかつていなかったのだ」
私がいうと、何故だか師匠は拗ねたような顔で私を見上げてきた。
「私は、友達じゃないわけ?」
「うむ」
頷くと殴られた。しかし嘘はないのだから仕方ない。
「師匠は友人よりももっと特別だ。どう形容してよいのかはわからないが、スティーブよりももっと気心が知れた間柄だと思っている」
私が答えると、やはり師匠は真っ赤になってそのまま家を出て行った。
『主よ、発言してもよろしいでしょうか?』
「なんだ?」
『私はあなたを少し見直しました。破壊行為以外は何の取り柄もないと思っていましたが、まさか女性の心を掴む才能があったとは』
「女性の心とは手でつかめるものなのか?」
『その上天然でいらっしゃる。どうやら跡継ぎの心配はいりませんね』
「そのような者を作るつもりはない」
『ですがせっかく新天地を見付けられたのです。この世界を我が物になさりたいとは思わないのですか?』
「不思議な話だが、こちらに来てからはそのような感情とは縁がない」
『ふむ』
「ただあるのは、ハンバーガーがたまらなく愛しいという感情だ」
『私には理解しがたい』
「お前にもそのうち分かるさ。私とお前は破壊のために作られた物同士、その片割れがハンバーガーをこんなにも愛せるならば、お前にもその素質があるはずだ」
『お言葉ですが、私は物を食せません』
「ならばあの造形を愛でればよい」
『たしかに、あのふくらみは女性の胸のようで愛らしいとは思います」
「おまえ、エッチだな」
『覚え立ての言葉をすぐ使いたがる所は、直した方がよいかと思います』
魔王の相棒は、そう言ってエンジンを吹かした。




