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むりやり自宅警備員  作者: 白かぼちゃ
お世話になります、サンライズ
56/62

捨てるアイデアと拾わせてもらったアイデア。


 日中の営業が終わった俺たちは夕食もそこそこに店内の掃除に追われていた。お客さんに商品についての説明をすると決めた二日後、なるべく早く答えたほうがいいだろうということでフィオナに取材してほしいと申し込み、即日応じてもらえることになったのだ。

 ジルさんとの協議の結果俺の魔法の制約については絶対に言わないということになったが、そのほかのことについては俺の裁量に任せられる事になった。危険性を考えて制約を話さないのはもちろんのこと、あまり正確に話しすぎて万一にも対策をとられてしまわないようにするための処置である。とはいえどこまでなら話しても大丈夫かなど分からないので、どんな魔法かは説明して後は積極的には答えない方針でいこうと思っているぐらいなのだけど。


「こちらの掃除は終わったぞ。サイトウも話す内容はもう大丈夫か?」


「話しちゃだめなことは確認したから大丈夫だと思うよ。口を滑らせなければ……」


「それはがんばれとしか言えんぞ」


 雑巾を洗いながら苦笑するアスに「だよねぇ」と笑いかける。


「しかしサイトウならばきっと大丈夫だ。いつも通りでいれば何の問題もないぞ」


「なにその信頼感。どっからきたの」


「主にサイトウの普段の行動からだな」


 残念ながら俺は無から有を生み出すことなど出来ないので、アスが呆れと信頼感あたりを誤認してしまったのだろう。それとも俺の行動がよく見えていなかったとかもしれない。この世界にメガネはあるのか、メガネ。


「何を考え込んでおるのだ?」


「えーと、はじめは正しい認識のための補助器具の有用性だったけど、今は誤認における過大評価とその末路かな」


「……よく分からんがそのあたりまでフィオナが来ておるからそのつもりでおるのだぞ」


 獣人ということを広めてからバンダナで隠されていないアスの耳がぴくぴくと反応している。実際どのぐらいまで近づいているのかは分からないけれど、ある程度近いのは間違いないのだろう。

 部屋をもう一度ぐるりと見渡し不備がないか確認し迎え入れる体勢を整えた。



 少しするとコンコンとドアをノックする音が聞こえてくる。返事をして扉を開けるとそこにはいつも通り明るい笑顔をして、夕方だというのに元気いっぱいといった感じのフィオナが立っていた。


「こんにちは、取材させてもらえるということで伺わせていただきました」


「いらっしゃいませ。取材をお願いして当日に来てもらえるなんて本当にありがとうございます」


「いえ、こちらとしても今サンライズ中の注目を集めているエバンス商会に取材させていただけるなんてありがたい限りです。お話を聞いたとき行きますと即答してしまいましたよ」


 あははと笑うフィオナをとりあえず中に招きいれ椅子に座ってもらう。お茶を出し一息ついたところでフィオナはポツリとつぶやいた。


「でも……正直に言ってまたこうして取材させてもらえるなんて思ってもみなかったです」


「ほう、それはどうしてなのだ?」


「どうしてって言われても前に失礼なことしちゃったわけじゃないですか」


「そのときのことならばサイトウも我も仕方なかったと思っておるし納得もしておる。もはやフィオナが気にすることではないぞ」


 アスはからりと言うがフィオナは困ったように笑い返すだけだった。自分のしたことを気にしている人にとって気にするなといわれて「わかりました」と返すことなどできはしないだろうけど、俺たちからしてもそういってあげることしか出来はしない。どうしたって後はフィオナの問題なのだ。


「どうしても気になるようでしたら、よりよい記事が書けるようにがんばってください。特に今日の取材がいい記事になったりすると嬉しいですね」


 アスのほうに顔を向け「ねぇ?」と声をかけるとアスも「なぁ?」と応じる。呆れたのか何なのかフィオナは俺たちを見てくすりと笑った。


「エバンス商会の商品の記事ですね。がんばらせていただきます」


「うむ、ぜひがんばってくれ」


 アスの言葉にフィオナは頷きごほんと咳払いしメモを構えた。


「ではお聞かせください。今エバンス商会で販売されている商品はいったいどこから入荷されているものなのでしょうか?」


「分かりました。ただそれを説明する前に見ていただきたいものがあります」


 俺は一度立ち上がり台所のほうから塩を一つまみ入れた小皿となにものっていない小皿を持ってきた。


「見ての通りこれはただの塩なんですが少し舐めていただいていいですか?」


 フィオナは不思議そうな顔をしたが頷いて小皿から塩を手に取りひと舐めする。目をつぶり入念に舌の上で転がし答える。


「確かに普通の塩ですね。これがどうかしたんですか?」


「ではこちらはどうですか?」


 俺はもう一皿塩を乗せた小皿をフィオナに渡した。フィオナは何かを考えるように眉を動かしたが、そのまま受け取り先ほどと同じように口に運ぶ。


「これも普通の塩ですけど台所から持ってこられてなかった気が……」


「そうですね。台所からは持ってきていないです」


 俺はフィオナの前にある小皿を引き寄せ、手をかざし魔法を発動させた。かざした手が薄く光り白い粉がさらさらと小皿の上に落ちていく。粉はどんどんたまっていきあっという間に小皿の上で山を作った。


「えっ、……えっ?」


「これが俺の魔法です。そしてうちの商品の入荷先でもあります」


 続けて店でもよく売られている商品を数個、魔法を使い机の上に出していく。はじめは何が起きたか分からないとばかりに呆然としていたフィオナだったが一つ、一つと机の上に商品が並んでいくごとに目が大きく見開かれていった。


「創造、魔法? でもこの種類って……!」


「食べ物を作り出す創造魔法です。皆さんがよく知っている食べ物もそうですけど、ここでしか売っていないような珍しいものもこの魔法で出したものです」


「こんなでたらめな創造魔法今まで聞いたこともありませんよ!?」


 フィオナはぐいと身を乗り出して俺に質問をぶつけてくる。新聞記者である自分がまったく聞いたこともないクラスの魔法がこんな身近に存在するなんて。そんな驚きがフィオナの表情からありありと伝わってきた。


「諸事情でお伝えすることは出来ませんがこの魔法、なかなか面倒なこともあるんですよ。使ってるととても万能なんて思えないぐらいには」


 頭に浮かぶのはアスの助けがなければ食料を出せず大変なことになっていただろうこの魔法にかかる金銭。そしてそもそも俺がここまで苦労している元凶とも言える自分の土地から出られないという制約。助けられることも多いが苦しめられることも多いこの魔法に対する複雑な感情が胸の中で渦巻いた。

 そんな俺の表情から何かを感じ取ったのかフィオナは頭突きでも仕掛けて来そうな勢いを失速させ、自分の椅子にゆっくり腰を落とした。


「それほどの大魔法ですからやはり相当の制約があるんでしょうね。すいません、無神経なことを」


「いえ、ジルさんの話を聞く限り制約を差し引いてもすごい魔法なのは間違いなさそうですから無神経とは思いませんよ」


「そうだぞ、気にするな」


 あまり関係ないアスが急に口を挟んでぐいとお茶を呷る。

 やけに偉そうなアスの姿を見てフィオナとお互い軽く噴出し、まねして一度お茶に口をつけ間を取った。


「それで今回取材していただきたいのはこの魔法で創り出せる皆さんに知られていない食材のことなんです。俺の故郷では昔から食べられているものなんですけど、残念ながらこのあたりではほとんどない」


「サイトウさんの故郷の食べ物だったんですか。てっきり私は魔物の森に関係あるものかと」


「お客さんもそう思っていたみたいです。それで安全な食べ物か気になってしまわれたみたいで」


 実際は魔法で出した日本の食べ物だとしても、お客さんが魔物の森で採れたものだと思い込んでいれば心配になるのも無理はない。何せ魔物がはびこる未知なる森なのだ。いくら売っている人間の俺や獣人のアスが大丈夫といったところで、一度疑念を持ってしまった人にとってはなかなか信用できるものではないだろう。


「なるほど。だから私にこの食べ物はサイトウさんの故郷の安全な食べ物だということを伝えてほしいというわけですね」


「はい、その通りです」


 俺の故郷のものだと伝えてもらえれば少なくとも怪しくて食べられないという人が減ることは間違いないだろう。故郷である日本のことをそのまま話すわけにはいかないから疑念を拭い切れない人もいると思うけど、好転することは間違いないはずだ。


「失礼ですけどサイトウさんの故郷をおうかがいしても?」


「すいませんが。ただここからとても、とても離れたところにある国です」


「……ではこのあたりに同郷の方、もしくはその国のことをよく知っている方はいらっしゃいますか?」


「ほぼ間違いなくいないと思います」


 フィオナはうつむいて何かを考え始めた。故郷がはっきりしないというのは予想以上の問題になってしまったということだろうか。人間である以上魔物の森出身でないことは伝わるかと思ったのだが少し考えが甘かったのかもしれない。

 アスは心配そうにこちらを見てくるが大丈夫と笑いかけておく。何が大丈夫なのか分からないけど、そうしておくより仕方がない。


「サイトウさん。非常に申し訳ないのですが、ご希望通りの記事を書くことは出来ないと思います」


「それは故郷がはっきりしないから、ということでしょうか」


「この場合はそれよりも本当にサイトウさんの故郷の食べ物かはっきりしないというのが問題なんです。疑うわけではありませんがその食べ物がサイトウさんの故郷のものか、魔物の森のものか、はたまたまったく関係ない場所のものなのか。私には確認する術がないんです」


 申し訳なさそうに顔をゆがめるフィオナ。確かにその通りだ。

 俺がどこの食べ物かいくら言ったところでそれは証明にはなりえない。かといって日本や魔物の森に調べに行くことなんて不可能だ。そうなれば証明が出来ない以上フィオナが記事に出来ないのは至極当然のことだった。


「……参りましたね、その考えはまったく浮かんでませんでした」


「しかしこの食べ物が森にないのは確かではないか。森に来て確認してもらえばすぐに分かるはずだぞ」


 険しい顔をして憤るアスの頭にぽんと手を置く。


「無茶を言わない。魔物が出る森に入って調べてもらうなんて普通の人には危険すぎるよ。それに時間もかかりすぎるし、何かがないって証明は難しい」


 森にある食べ物が存在するという証明はそれを見せればいいだけだからさして難しいことではない。しかし存在しないという証明になると一転、とても難しい問題になる。少し探した程度ではほかの場所にあるかもしれないし、すべての場所を探しても見落としている可能性は捨てきれない。まして調べる場所が危険な森であるためおそらく不可能に近い難易度になってしまうだろう。


「それに魔物の森にないということが分かってもサイトウさんの故郷にあるものということははっきりしません。ですから記事にするにはこの食べ物が安全だと知っている第三者が必要になってくると思います」


「しかしそれは……」


「まぁ、難しいだろうね」


 三人が口を閉ざし部屋に重苦しい沈黙が下りた。部屋の中で音がするのは服のすれる音と呼吸の音。普段は気にならない外の音がいやにはっきり耳に届いた。

 何か解決策はないか。地獄にたれる蜘蛛の糸を俺はない知恵を絞って懸命に探した。しかし浮かんでくるのはくだらないアイデアばかりで、冷静な自分がまるで知っていたかのように問題点を指摘して消し去っていく。まさに完全な八方ふさがり。ここまで来てしまうと逆に悲痛な顔になるどころか笑いがこみ上げてきてしまう。


「どうしようもない、ですね」


「すみません。それでも、確認が取れないことを記事にするわけにはいかないんです」


 何も悪くないというのにフィオナは俺たちに向かって頭を下げる。その事実にまた、胸が痛む。


「記事に出来ないのは当然のことです。それにもし記事にしてもすぐに指摘されて答えられなくなってしまっていたと思います。ですから記事に出来なくて逆によかったのかも知れません」


「しかし記事に出来ないのであればいったいどうすればいいのだ?」


「どうだろう、自分たちで食べて安全だと見せるかな。今はそれぐらいしか思いつかないや」


 言ってて自分で笑えてくる。商品を毒見しないと売ることが出来ないなんていったいどんな商店なのだと。それでもそんな下策しか浮かんでこないほど追い詰められていることも確かなのだ。


「とりあえず一度休憩しようではないか。このままではいい考えも浮かんでこないであろう」


「私も賛成です。休憩したら何か思いつくかもしれませんし」


「……それもそうですね。何か持ってきますよ」


 俺は立ち上がり台所に向かう。適当なものはないかと探すが特にこれといって見当たらない。なければいつもは魔法で出してしまうのだがさすがにこのタイミングでそれはまずいだろう。


「サイトウさん、よければこの梨いただいてもいいですか? 以前ここでいただいてから私の好物なんですよ」


 後ろからの声に振り向くとフィオナが机の上に転がる梨を一つ掴んでいた。特段気を遣っている様子の見受けられないその自然な笑顔になんとも言えずほろりと笑みがこぼれた。

 俺は喜んでフィオナの提案を受け、皮をむいた梨を二人の元に運んでいった。


「やっぱりこれおいしいですね。この歯ごたえと甘みがなんともいえないです」


「うむ、うむ」


 次々に平らげていく二人に食べつくされてしまう前に俺も一つ口に入れる。シャキリとした歯ごたえにあふれる果汁、そして独特のさわやかな甘さと風味が口いっぱいに広がった。もっと冷えていれば言うことはないが、十分にうまいといえる味だった。


「なにも考えずに食べれば害があるなど思いつきもしないだろうにな」


 アスが最後の一つをかじりながらポツリともらした。最後の取り合いに負けたのか微妙にうらやましそうな表情をしながらフィオナも頷いている。


「知らないものを不安に思うのは仕方ないよ。……とはいえそれをどうにかしないと食べてもらえないからね。食べ物を出せる魔法があっても食べてもらえないんじゃ意味がない」


 商品が売れないというのはもちろん憂慮すべき事態だけれど、俺の中にはおいしいものを食べてもらえないという悲しさも確かに存在している。

 見知らぬ世界にやってきた俺にとって日本の食べ物が手に入ったというのはすごく大きなことで、それをおいしいと食べてもらえることもとても大きなことだった。森で料理を作っていたときも、サンライズで食べ物を販売している今も故郷の食べ物が認められるのはとても嬉しい。自分でもおいしいと思っているからこそ、もっとみんなに食べてもらいたいと思う気持ちは強くて、安全か分からないから食べてもらえないというのはとても悲しい。


 俺がひとり悲しみにくれているとフィオナがふと何かに気づいたように顔を上げた。


「……そういえばサイトウさんの魔法って正確にはどんな能力なんですか?」


「……正直にいえば『食料と生活用品を創造する魔法』ですね。それがどうしたんですか」


 フィオナが下を向いて何かぶつぶつ言いながら考え始めたのを見てアスと二人で顔を合わす。今いったことは俺たちは当然知っていることで、フィオナがなぜそんなに考えることがあるのかとても理解できなかったのだ。

 しばらく待っているとフィオナがゆっくりと顔を上げ、確認するように問いかけてきた。


「サイトウさんは、エバンス商会を繁盛させたい。聞くこと自体失礼だとは思いますけどそれに間違いはないですよね」


「もちろんです。だからない知恵絞ってがんばってるんですよ」


「ではお聞きしたいのですが、なぜサイトウさんはマナを創造しないんですか? 仮にコストが高いのだとしても間違いなくサンライズの勢力図に影響を与えるもののはずなのに」


「一度は考えたんですけどマナは出せなかったんです。先ほども言ったとおり『食料と生活用品を創造する魔法』ですから」


 マナが出せないことはサンライズに来てすぐ確認している。出せればそれこそ経営戦略が変わるぐらいに大きなものだったのだけど、出せない以上は仕方がないとあきらめていたのだ。

 しかしそんなことは魔法の説明をしたのだからフィオナだって分かるはず。疑問で怪訝な顔をしているだろう俺にフィオナはピッと指を向けた。


「そこなんですよ。ご存知かどうかは分かりませんがマナを食料としている動物は数こそ少ないですが存在しています。――サイトウさんのいう『食料』ってどこまでのものをいうんですか?」


 言われて見れば食料というのがどれだけの範囲を含むのかしっかり考えたことはなかった。これまで普通に日本で食べていたものやこちらの世界でポピュラーなものを出せていたのでまったく気にしていなかったけど、確かに分からない部分がないわけではない。森で働いているときもサンライズに来てからも、食料を出そうとしたときに「これ食料じゃないよ」と思ったことがないのだ。当然といえば当然なのかも知れないけどたとえば「人間にとっての食料」のような条件がついているのかもしれない。


「はっきりとはわからないですけど、自分で食べられないと思うものは出せるものの中になかったと思います」


「ということはもしかしたら人間にとっての食料かもしれないということですね?」


「かもしれないです」


 俺はたんたんとフィオナの質問に答える。隣からアスが手をたたく音が聞こえた。


「なるほどな。フィオナは魔法で出したものは安全かもしれないといいたいわけだな」


「あたりです!」


 満面の笑みでフィオナが手を伸ばし微妙に困惑しているアスとハイタッチ。隣で不思議空間が展開されている中で俺はようやく理解が及んだ。

 つまりフィオナはもし魔法で出せる『食料』が人間にとっての食料であれば、何を出したかは問題ではなく魔法で出したから安全だといえるのではないかと考えているのだ。


「理屈は分かったんですけど、それってどうやって証明するんですか?」


 フィオナの考えは発想の転換。確かにいい考えだと思う。でもそれはあくまで食料が人間にとってのものだと証明できてこそだ。それができなければただこの食べ物は安全だと言い張ることと何も変わらないのではないか。


「え? それは魔法鑑定士にお願いすればいいじゃないですか」


「……なんですかそれ」


「えっと、その名の通り魔法を鑑定してくれる人のことです。魔法を使う職業や依頼は多いんですけど、そのときいちいち魔法を見せていては大変ですので鑑定・評価の専門家として重宝されています。証明してもらえば公的に認められますし、もちろん性質上完全に他の組織から独立しているので圧力の心配もないんですけど……ご存知なかったですか?」


 信じられないとばかりにこちらを見てくるフィオナ。乾いた笑いでごまかしてみたけどごまかせていないんだろうなぁ。

 おそらく前ミリアが使ってくれたような魔法を調べる魔法を持っている人の集まりなのだろう。そんな便利な組織があるなら調べてもらわない手はない。


「その鑑定士の人には来ていただくこともできるんでしょうか?」


「出来なくはないと思いますけどどうしてですか?」


「いえ、魔法が魔法なんで内密に調べてもらいたいなと」


 本当は店から出られないので来てもらうしかないからなのだけど、そこまで正直に話すことは出来ない。とはいえどこまで調べられてしまうかが分からないので内密にしたいというのは間違いないので嘘ではない。

 

「そうですね。でしたら今から呼んできます!」


 はじかれたように立ち上がったフィオナは俺たちが止める間もなく外に飛び出していった。しっかり閉められることのなかった扉がかすかに動いている。

 半分上がった腰を下ろして少し伸びた手をゆっくりと下ろす。

 フィオナの行動がありがたいのに疑問をはさむ余地は一切ない。……ただ少し急すぎてついていけないだけで。

 

「とりあえず災難な鑑定士さんのためにお茶とお菓子でも用意しようか」


「少し贅沢なものを用意してやろうではないか」


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