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むりやり自宅警備員  作者: 白かぼちゃ
おいでませ、ベイビーバード
27/62

机上の空論からはじめませう。

デメリットから制約に変わりました。申し訳ないです。

 昨日のことで痛感した。もっと人を頼るべきだと。

俺の魔法は便利だ。うまく使うことができれば、この森の人達の生活水準を大きく上げることができるだろう。しかしその反面、制約のせいで誰かに助けてもらわなければまともに生きていくこともできない。この点が日本にいたときとはまったく違う。


 日本にいたときはなるべく迷惑をかけないよう――貸しをつくらないように生きてきた。でもここではそれじゃあ駄目だ。たくさん助けてもらってたくさん助けられるようにならなきゃいけないし、なりたい。だから――





「それではこれから、サイトウ主催第一回『俺が外に出るにはどうしたらいいんだろうね? みんな助けてー』会議を始めたいと思います。アスさん、モールさん、ミリアさんよろしくお願いします」


「うむ、任せるがよい」


「がんばります!」


「任せて~」


 こうなりました。


 ちなみにグランさんはお仕事で欠席です。決して呼ばなかったわけではありません。





「それではまずこの会議の目的ですが――」


「いや……それは言わなくてもよいと思うぞ?」


「そう? じゃあ早速だけど本題に入ります。前方のホワイトボードをご覧ください」


 現状をまとめるとこうだ。俺が外に出るためにはこの森の中に土地を所有することが必須。つまり王、ひいては森への貢献が必須だということだ。そして問題となってくるのがその方法。昨日アスから聞きソースの普及、王への献金、料理文化の発展では駄目だということがわかったので俺でもできる他の方法を考えなければいけない。詰んでる気がするのは気のせい。


「森の中に土地が必要だという前提は間違ってないはずよ。私もいろいろなものを見てきたけど他に方法はないと思うもの」


「土地の所有のためには森への貢献が必須というのも間違いないな」


「という訳で何ができるかという話になってくるんだけど、俺は力も弱い一般人。やっぱり魔法を使うしかないと思うんだ」


「そうですね……普通の人じゃ俺たちに身体能力では敵いませんからね」


 前リンゴを植えるときに見せてもらったけど、あれに勝てたら自主的に人間のカテゴリーから外れるべきだと思う。


「ちなみに森への貢献って具体的にはどういうことなの?」


「森の保全と森の住人への貢献だな。森の保全は主に森を荒らす魔物の討伐で、例外的に森に発生した問題を解決することもある。住人への貢献はそのままの意味だが、森のバランスを崩さない限りにおいてという条件がつくな」


「土地を持ってる人のことを土地持ちって言うんですけど、木々の伝染病を沈静化させたミリアさんや立場の弱い人を積極的に助けている親分なんかもそうですね」


 そのほかにも土地持ちの人のことを聞いたが、魔物をたくさん討伐した土地持ちの人は結構いるもののそれ以外の土地持ちの人は珍しいらしい。荒事かんべんな俺としては、声を大にしてもっと戦闘以外の事をしてる人を評価してあげてと言いたい。


「やっぱそう簡単には土地はもらえないか……。最悪転移用の飛び地でもでいいんだけどなぁ」


「基本好きなところに住んでいいこの森で土地をもらうことは名誉みたいなものだからな……。そういうわけにもいかんのだ」


「そんなこといってないで普通に土地をもらえるようにがんばりなさい?」


「りょーかいです」


 結局その日は現状確認できたぐらいで具体的な方法は決まらなかったため、また明日ということで解散した。基本的に俺の魔法を使う方向でいいと思うんだけど、問題は俺がいなくなればそれまでということだ。技術を持ってるわけでもないし森にあるもので作ったものでもないから、珍しいものを売っている商人と変わらないし、生活用品を売っても修理すらできない事を考えるとむしろそれ以下だろう。


「結局は魔法以外にとりえがないことが問題か」


 みんなが帰った後一人呟く。日本では普通にまじめな学生をやっていて、それなりには優秀だったんじゃないかと思う。ただ俺が今までやっていたことは現代社会に対応するためのものだったというだけの話だ。


 数学がわかっても実際の使い方がわからない。科学がわかっても器具がない上活用できない。唯一役立ったのは大体の文明レベルを判断できる社会の知識ぐらいかな?

うーん、厳しい。


 そんなことをもんもん考えながら眠りについた。









「いったいどうしたものかな」


 店が終わり賄いを食べながらアスに相談する。


「我もあの後父上に相談してみたのだが、戦士の数が足りない以外に問題はないそうだ」


「それは手が出ないね……」


 仮に討伐に参加できたとしても開始5秒でやられる自信がある。二重の意味で問題外だ。


「まぁみなで他の方法を考えればよい。それよりも今は会議後の食事の献立でも考えておこうではないか。ちなみに我はシチューがよいと思うぞ。鶏肉のやつだ!」 


 もうすでに決定じゃんと言ってしまった俺は悪くないはず。





「それではこれから、サイトウ主催第二回『俺が外に出るにはどうしたらいいんだろうね? みんな助けてー』会議を始めたいと思います。今日は昨日のメンバーに加えグランさん、ジルさんもよろしくお願いします」


 ジルさんは森の外の人も混じったほうがいいだろうと連れてきてくれました。ええ、それはもうジルさんも喜んで来てくれたそう(・・)です。来たときの光景を見て、だいぶ強引に連れてきたんじゃないかと誤解してしまいましたよ。はい。


「初めての人もいますのでまずこの会議の目的ですが――」


「それはいいんじゃないかい?」


「そうですか? では昨日の内容ですが――」





「なるほどね、だいたいわかったよ。つまり魔法以外にできることがないのに魔法も土地をもらうことには向かないって事だね?」


 そのセリフを聞いたアスやモールがピクリと反応してくれたが手で制す。ありがとね、確かに否定はできないんだけどみんなに助けてもらえるから気にしてないよ。


「そんなとこです」


 そういうとジルさんはつかつかとこちらに歩いてきて盛大に頭を引っぱたいた。


「まったく、そんなことでどうするんだい! あんたは商人としてこの店を軌道に乗せたし、これだけの人に助けてもらえている。こんなことできる奴なんてそうそういないんだからもっと自分に自信を持ちな!」


「そりゃそうだな。第一ただの人間がこの森で生き残ってるだけでもたいしたもんだぜ」


 俺の周りって優しい人多すぎるよなぁ。軽くにやけてしまう顔を隠すため軽くうつむく。二人の言葉をかみ締めて幸せな気分に浸っていたが、聞き捨てならないセリフに気がついた。


「……この森って危険なんですか?」


「普通の人間じゃ太刀打ちできないような魔物が出てくるからなぁ。俺らが討伐してるとはいえここは北の端で守りが完全じゃねえから人間にとっちゃそれなりに危険だと思うぞ?」


「とはいえ我がいるからな、そのような魔物が出てきたとしても心配するな!」


 知られざる真実。なんてこったい、小市民の俺がそんな危険なところに住んでいたというのか。ウエイトレスのつもりだったけどアスってボディーガード兼ねてたんだね……。給料上げとかなくちゃ。


「とは言っても修行で森に来る人も結構いるのよ? でもこの森って大きいから途中で力尽きちゃうみたいで私もよく外まで運んでるわ」


 現代日本人の感覚で言うと信じられないがこの世界では普通のことなんだろう。その話を聞くまでそんな奇特な人がいるなんて想像すらしなかった。


 しかしこれは使えるのではないだろうか? アスの話ではこの森では戦士のなり手がいないといっていた。そこに修行で来るような人達を加えれば、大きな戦力になるはずだ。 


「今思いついたんですけど、この森の警備に修行に来るような人達を加えるのってどうでしょうか?」


 なかなかいいアイデアだと思ったのだが皆様の反応があまりよくない。苦笑してる人もいれば憮然とした顔の人もいる。


「サイトウさん、正直厳しい気がします。確かにあの人達が警備に参加してくれるようにできるなら土地をもらえるレベルの話だと思います。そしてもしその時、人間との交流が広まるなら快挙といってもいいです。でも……あの人達は俺らのこと怖がって絶対了解してくれません」


「ちがいねぇ! サイトウみたいに友好的にしてくりゃこっちも気持ちよく話せるってのに、あいつら怖がって近寄ってきさえしねえ。前に助けた奴なんて俺をみて逃げ出しやがったんだぞ!?」


 憤然とするグランさんに対し、ジルさんが申し訳なさそうに言葉をかける。


「そいつが失礼なのは間違いないんだがある程度は理解してやって欲しいんだ。獣人は見た目も獣に近い上、身体能力は人間を軽く上回ってるからね。生き物として弱く、技術を磨き、集団戦術を磨くしかない人間からするとどうしても恐ろしいんだ。正直に言えば私だってお金がどうしても必要じゃなかったら、獣人の人と取引をし始めようなんて思わなかったはずだよ」


 そういわれてしまうと確かにわからないこともない。その気になれば簡単に人間を屠ることのできる存在と仲良くするのは簡単なことではないのだ。

少し怒らせただけでも危ないかもしれない。しかも同じ人間ではないのだから、常識自体が通じないかも知れない。そう思ってしまっても仕方がないだろう。

もちろんお互いのことをしっかり知ることができれば共存は可能だと思うが、今まで特に交流もなかったのでは難しいだろう。


しかし実際に森で生活している人間の俺が説得すればどうだろうか? 


「皆さんは人間が嫌いというわけではないんですよね?」


「無論だ。でなければサイトウとこうして話しておることもあるまい」


 まったく道理だ。


「じゃあ俺が説得して回って、戦えるような人を集めて来るってのはどうでしょう? 俺はこの森の人達のいいところをいっぱい知っています。そんな俺が説得すればできるはずです」


 希望が見え、自然と笑みがこぼれる。考えれば考えるほどこれしかないような気がしてくる。

――俺の魔法はこれに必要な条件を満たしている。


「それはあたしも考えたことがあるんだけどね、ひとつの戦力として考えられるような規模の奴らをこの森に住ませようと思うと、どうしても森の負担が大きいんだよ」


「実はこの家、お金さえかければ相当大きくなるんです。それに魔法を使えばお金しだいで、何人だろうとかなりの長期間の食料を確保できます」


 この家を城近くまで大きくできるとセラさんに聞いたとき、そんなに大きくすることもないだろうと思っていた。この魔法の効果がわかったとき、珍しいものを出すにはコストがかかるから微妙と思っていた。しかしそんなことはなかったのだ。


 建物は多少リスクはあるものの、通常では考えられないような低価格でかなりの人が住める規模にすることができる。魔法は珍しいものを出すことには向いていないかも知れないが『お金さえかければ物資をどこでも、いくらでも出せる』のだ。こう考えれば使えないはずがない。


 この方法でいけば食料や住居といった森への負担は抑えることができる。あとは前金だとか必要経費だとか言って王を説得し、転移用の土地をもらいそうした人達を連れてくる。そして俺が生きている間に関係を取り持ち、流通を確保すれば文句なしに問題解決だ。

机上の空論? たしかにそうだ。でもみんなが手伝ってくれれば勝算は十分にある。


 メンバー全員の顔にも理解の色が浮かぶ。


「希望が見えてきました。みなさん協力よろしくお願いします」






今回は会議なので会話が多めです。誰がしゃべってるかわかりますかね?

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