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むりやり自宅警備員  作者: 白かぼちゃ
おいでませ、ベイビーバード
22/62

この魔法もうちょっと融通きかないかなぁ。

「……もう起きるか」


 今日は『フリーズボックス』を届けてもらうため、いつもより早くもぞもぞと動き始めた。

ボケボケしながら昨日のうちに煮込んでおいたビックベアーの肉を再び加熱する。


不審な肉はとりあえず甘辛に煮ておけば食えるだろうという安易な発想で作ったものだったが、これがなかなかにおいしい。かなり噛み応えがあってジャーキーのように噛めば噛むほど味が出てくる。……この肉はいいつまみになりそうだ。


 



 仕込みもあらかた終わり、お茶をすすっているとうちの従業員さんがやってきた。

バロメーターの耳がピクピクしていることから鑑みるに何かあるのかな?


「おはよう。今日は少し早いね」


「サイトウとこれを食べようと思ってな。これは見たことがないであろう?」


「これは……木の実を乾燥させたもの?」


 しわの入った赤い木の実でつまんでみるとぷにぷにしている。さくらんぼのドライフルーツに似てるかな?


「うむ、ポルの実を日に干したもので我の好物なのだ」


 食べてみると果物の甘みを凝縮したような上品な甘さがした。

よくあるドライフルーツのように砂糖の人工的な甘さがしない分とてもおいしく感じられる。


「これはおいしいね。アスが気に入るのも分かる気がするよ」


「ビックベアーもいいであろうがこれもよかろう。我はこの甘さが特に好きでな。遠慮せずに食べるがよいぞ」





「おはよ~。頼まれたもの持ってきたわよ~」


 アスがきてしばらくするとミリアと大きな箱を背負ったジルさんがやってきた。

あれがフリーズボックスなのかな? あのぐらいの大きさがあれば確かに不自由はしなさそうだ。


「おはよう、注文の品を持ってきたよ。ミラ=セフィラス作中型フリーズボックス。中型として十分な機能を持ち、驚異の魔力保持率を誇るセフィラス製さ。値段も手数料込みで30,000フォル、掘り出し物だよ」 


「しまった、フォルは全部吸収しちゃったんだった。申し訳ないんですけど魔力じゃだめですか?」


「じゃあ帰りにフォルを渡しておくからかかった料金を私に魔力で払ってもらおうかしら~。私のほうは(3,000)でいいからあわせて(33,000)になるわ~」


「助かります。じゃあ……はい、お願いしますね」


 よかったー。そういえばフォルを持ってないんだよね。この森の外との交流を考えれば全部吸収しておくのも考えものだな……。


「ちなみに魔力保持率って……」


「具体的には魔力の補充を三ヶ月に一回ぐらいすればいいよ。今日は補充用魔力を時間がなくて持って来られなかったけど、また注文があれば持って来るから安心しな」


 どうも充電みたいに魔力を補充するみたいだ。三ヶ月に一度がどんなものなのか分からないけれど悪くはないんだろう。ジルさんが具体的な性能を聞いてると勘違いしてくれて助かったよ。


「さて取引も終わったことだし飯食っていってもいいかい?」


「もちろんですよ、どうぞお入りください」









「さて、なににしようかね……」


「狐うどんをお願いするわ~」


 じっくりメニューを見て考えるジルさんとメニューも開かず即断で頼むミリア。

気に入ってくれたのは嬉しいんだけど他の料理も見てもらえるとなーなんて。


「あんたの魔法って食材を出せるって言ってたけどメニューはこれだけかい?」


「いえ、人気の出そうなものをメニューにしただけで食材に関して言えば大体は出せると思いますよ」


 なんだか目がいやに輝いているのが不安を催すんですが……。

うちでの小槌にはなれないと思うんですけどねぇ。


「じゃあフライングフィッシュを食べたいんだけど一匹いくらぐらいだい?」


「待ってくださいね……えーっと一匹(8,000)……って高くないですかこれ?」


 何これ。とらふぐ的な高級魚だったするんですか?


「なるほどねぇ。金は払うからちょっと出してみてくれないかい?」


 ビクビクしながら出してみると焼き魚にするにはちょっと物足りない大きさの魚が一匹出てきた。

ちょっと責任者でて来いや。これで(8,000)はさすがに詐欺だろう。

詐欺の片棒担いじまったとあせりながらジルさんを見てみるが、意外にもまったく怒っていない様子だった。


「ふうん。鮮度はまぁまぁで質も悪くないみたいだね」


「怒ってないんですか……?」


「ああ、あんた知らないのかい。このあたりは海が遠くて魚が手に入らないのさ。無理にでも手に入れようとすると氷系の魔法使いが凍らせながら運んでこないといけないから、このぐらいの魚でも(8,000)ぐらいはするんだよ」


 日本で暮らしていると気づかなかったが、運輸手段がしっかりしていなければ内陸のほうでは魚なんて手に入らないだろう。それにしてもここ、海遠かったんですね……。


「まぁ値段が妥当すぎるからそんな大量には売れないだろうね。安く手に入れば稼いでやろうと思っていたのに残念だよ」


 それができればよかったんですけどね。世の中うまくいかんものです。


「昨日調べてたんですけどこの魔法で物を出すときにかかるコストって『多くの人が妥当と思える価格』みたいなんですよ。魚のことを聞く限り、周辺に住んでる多くの人たちが対象なんでしょうね。まったく、おかげでこちらも食材の販売では儲けられそうにありませんよ」


 顔を見合わせて苦笑する。考えることはみな同じですね。


「この魚だけじゃ足らないから他にも適当に料理を頼むよ。そうだね肉類でお願いしようかね」


「はい、しばらくお待ちください」





「おいしかったわ~」


「いやうまかった、これなら十分やっていけるよ。どうだい、エバンス商会の飲食店部門の創立もやってみる気はないかい?」


「待て! サイトウはこの店の主人だ。勝手なことを言うでない!」


「とてもじゃないけど今はこの店だけで精一杯ですよ」


 それどころかこの店すらうまく回せてませんよ。ジルさんも分かっていたのかさして残念そうな様子も見せなかった。


「また気が向いたらいっとくれよ。じゃあごちそうになったね、うまかったよ」


「ユウくんまたね~」


「ありがとうございます。またお越しください」 

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