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むりやり自宅警備員  作者: 白かぼちゃ
おいでませ、ベイビーバード
20/62

紳士って聞くとマイナスイメージが浮かぶのはなぜでしょう?

ぎりぎり間に合いましたかね?


さて本日は『ベイビーバード』開店二日目です。

昨日の疲れが残っているのか腕は筋肉痛だし起きるのはつらいし大変です。

布団が圧倒的な拘束力を持って離してくれません。

はい、分かってます。遊んでる暇なんてないですよね。

……がんばっていきましょー。





「サイトウよ、来てやったぞ!」


 朝っぱらから元気なアスは何かいいことでもあったのかにこにこしながらやってきた。

ピンとたった耳からもテンションの高さがうかがえる。


「おはよー、今日からよろしく頼むよ。

はい、これ仕事中に着てもらうエプロンね」


 渡したのは汚れてもわかりにくいような黒っぽいエプロン。

ところどころにフリルがあしらってあるのを選んだのは義務感とでも言うべきだろうか。

多少高くついたがまったく後悔していない。いや……むしろ安すぎたか?


 それにしても女性用の服とかはなかったのに、かわいげなエプロンがあったのはどうしてだろう? まさか俺が着るかもしれないって認識されてるわけじゃないですよねぇ、神様?


「アスには注文をとったり料理を運んだりしてもらおうと思ってるんだけどよかった?」


「うむ、任せておけ! 我にかかればその程度造作もないわ」


「よろしくね。じゃあいろいろ準備して開店に備えよっか」









「ありがとうございましたー」


 昼のピーク最後のお客さんが笑顔で店を後にする。

お客さんのいなくなった店内は今までの熱気がうそのように穏やかだ。

昨日と違いどこか爽やかさすら感じさせる疲れが体を満たす。


「みな満足して帰ったようだな。これもすべて我のおかげであろう?」


「半分ぐらいはアスのおかげかな?

これで厨房のリンゴをつまみ食いしなかったらもっと満足してくれる人がいたんだけどね」


「サイトウよ、助けてくれ。実はある厳しい雇い主が物も食べずに働けというのだ」


 二人でくすくす笑いながらアスは机を拭き、俺は簡単な賄いを作る。

優しい雇い主は従業員に料理をごちそうしましょうかね。


「それにしてもアスって随分舌が肥えてるよね。やっぱり王族だといいもの食べてるの?」


 まかないに作ったオムライスを食べながら気になっていたことを尋ねてみる。

中央に立てた旗を倒さないよう、周りから削るように食べてるアスを見ると親しみやすい王族もいたものだと心から思う。


「王族は多少なりいいものを食べてはいるが、我の舌が肥えているのは自称ジェントルマンがいろいろなものを食べさせてくれたおかげだな」


「ああ、そういえばグランさんがそんな人いるっていってたっけなぁ。どんな人なの?」


「実際ジェントルマンといっても問題ないぐらいの老人だぞ。もう今は隠居して余った時間を使いお茶を取り寄せたり料理を作ったりと気ままに過ごしておる。まぁそのせいか食事には少々うるさいのが玉に傷だがな」


 その説明だけ聞くと美食家の紳士を思い浮かべるけど……動物なんだよなぁ。

お茶を優雅に飲んでる姿がどうがんばっても想像できない。





「失礼するよ」


「あ、いらっしゃいませ」


 扉の向こうに立っていたのはステッキを持ち、燕尾服を見事に着こなした二足歩行のウサギ。人型ではなくウサギ。立ち振る舞いが優雅であろうがウサギ。


 ああ……こいつか。


「はじめまして、ミックと申します。お茶をいただきに来たのですがよろしいですかな?」


「はじめまして、この店をやっているサイトウといいます」


「ミックよ、店に来ていきなり名乗るでない」


「王女様、いらっしゃったのですか。そういわれましてもジェントルマンとして礼儀を失するわけにはいかないのですよ」


「とりあえず立ち話もなんですしどうぞお座りください」


 カウンターに座ってもらいステッキを預かる。ずしりと重いステッキは持ち主がまだまだ現役だと語ってくれているようだ。


「おいしい店ができたと聞きましてな。これは行かねばと思い来させていただきました。食事は済ませていますのでお茶と何か合うものをもらえますかな?」


「はい、少々お待ちください」


 まるでアフタヌーンティーではないですか。

できれば紅茶とスコーンでも出したかったが調理器具の都合でホットケーキに変更。

フォークが沈んでしまいそうな出来立てホットケーキにとろりとシロップをかけ出来上がり。

いい具合に蒸らした紅茶を暖めたカップに入れ一緒に持っていく。


「お待たせしました」


「今の話聞いておらんかっただろうな!?」


「何のこと?」


「なに、お気になさらず。それにしてもおいしそうだ」


 目の前でウサギが優雅にお茶を飲んでいる。

現実は想像よりも奇なりといいますか。


「これはおいしい! お茶については詳しかったつもりですが私の知らないこんなにもすばらしいものがあったのですか! このパンにしても私が知っているものよりはるかにやわらかく甘い。そのお年でこれほどのものを作る方がいらっしゃるとは……この世にはまだまだ興味がつきませんな!」


 自分の実力でもないものをここまで褒められるとなんだか気恥ずかしい。

本当に褒められるべきはミックさんのように他人を素直に認められる人だというのに。





「いやいや、本当においしかったです。ぜひまた来させていただきますよ」


「ありがとうございます。お茶の販売もしているのでぜひご利用ください」


「それ、さっさと帰るがよい」


 口をへの字にして腕を組んでるってさすがに接客の態度じゃないでしょう。


「アス、その態度はないと思うよ」


「私が口を滑らせてしまいましてな。怒らないでやってください。

それでは王女様を『よろしく』頼みますよ」


「だまれー! だまらぬかー!」


「? もちろんですよ」


 王女様を無体に扱うなんてことするわけないじゃないですか。


「サイトウよ、なんとなく腹が立つので蹴らせるがよい」


「痛い痛い。正確にひざ裏狙うのは止めて」


 ミックさん、さっきの発言ってこれを予測していたんですか? 

ぜひ今度あったとき予測の仕方教えてください。







今回は少し書き方が変わってたかもしれないです。


※よろしければ評価・感想・ご意見などお願いします。していただけると白かぼちゃが喜びます。

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