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むりやり自宅警備員  作者: 白かぼちゃ
はろう、異世界
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人参があればお馬さんも走るのです。

「どういうことですか?」


 突然の言葉に鼓動が高まる。

しかしこのデメリットは神様によってつけられたものだ。

そのレベルのものをどうにかできるのだろうかという思いもある。

期待と不安の混ざった気持ちで言葉を待つ。


「あたしは商人だからね。商人の発想で考えさせてもらったよ。

決まりごとがあるならその抜け道を考えればいいんじゃないかってね。

その呪いは『自らの所有する空間の中から出られない』っていうじゃないか。

つまり所有する空間を増やしても問題ないんだろう?

ミリアみたいな転移系の魔法は空間から空間への転移だから、離れた空間にも魔法を使えば移動できる。

そこら中の土地を買っちまいなよ」


 背筋がゾクゾクするのを感じる。

一度は諦めた。この未知なる世界を自らの目で見て回ることを。

そして覚悟した。変わらぬ日常、変わらぬ風景、数人の友人たち。それだけがすべての狭い世界で生きていくことを。


 それが変わるかもしれない。


「自分にできるでしょうか」


 意味のない問いだ。


「そんなこと知るもんかい。できるかどうかはあんた次第さ。

まぁ利益がでるようであればエバンス商会として手伝ってやるよ」


 挑発するような笑みを浮かべてくる。

つられて笑っているのが自分でもわかる。

挑発されるまでもなく答えは決まっているのだ。

無茶だろうがなんだろうが知ったことか。

世界中の土地を買い漁ってやる。


「よろしくお願いします。

どうもたくさん稼がないといけなくなったようなので」





 


 それを聞くと一体どうしたのだろう。

みんなが三者三様に優しい目をして笑い始める。


 にやにや笑いながらジルさんが言う。


「うちは慈善事業はしてないからね。せいぜい頑張りな」


 にこにこ笑いながらミリアが言う。


「いろいろな人に相談してみるといいとは言ったけど、こんなに早く見つかるとは思わなかったわ。

私も移動のときには協力するわ」


 くすくす笑いながらアスが言う。


「普段のサイトウも悪くないが今のようなのも悪くないぞ」


 自分でも途方もない野望だってことは分かってる。

それでもみんなが協力してくれたらなんとかなりそうな気がするから不思議だ。

まったく、彼女たちと出会えた幸運にこの世界で初めて『神に感謝』だよ。


「それでまずはどうするんだい?」


「そうですね……」


 さてどうしたものか。

いろいろなところを見て回るためにもこの森から出る必要がある。

そういえばミリアが転移に制限があるって言ってたっけ。


「そういえばミリア、魔法の移動距離に制限があるって言ってたけどどれぐらいなの?」


「そうねぇ、ここは森の北側にあるから北に出るなら一回中継地点があれば大丈夫だと思うわ」


 なるほどなんにしてもこの森に土地を持たなければいけないのか。


「じゃあこの森で土地を所有しないとな。

アス、この森の土地はどう扱っているんだい?」


「もちろん王のものだ。とはいえ一部を除き自由にして良いことになっておるがな。

どうしても所有したいようならこの森に貢献し王から賜るしかあるまい。

実際ミリアも賜っておるしな」


「私は滝の近くの土地をもらったわ。

魔力の濃度が高くてそこからだと魔法で転移できる距離が長くなるのよ~」


 それは困った。

値段にもよるがお金は店を開けばある程度は稼ぐことができると思う。

しかし王に貢献といってもここから出られない以上難易度が高い。


「飲食店をやるつもりだし、食文化を発展させれば大丈夫かな?」


「うむ、問題ないであろう。

ただこの森には調理するという文化があまりない故、この森にない料理でなく食物を広めるという形が望ましいな」


 ならこの森にないものでみんなに好まれる物を探さないとな。

いっそのこと農場もやってしまおうか。

誰かできる人を募集して育ててもらい、その人に広めてもらう。

育てるものは店でだして人気が高かったものにすればいい。

どうせやるならそうした方が効率がいいだろう。


「ジルさん、食堂を開いていろいろな料理を出したいと思います。

ある程度経ったら農場を開いて、店で好まれたものを育てて広めていきたいと思います」


「いいねぇ、方針についてのアドバイスは必要ないね。

細かいことについては口で教えたって身につくことじゃないんだ、やりながら覚えていきな。

これで言うことはなくなったんだけど報酬はどうしてもらおうか。

店についてはほとんど言ってあげられなかったから、土地を買う手段を教えたことに対する報酬になるね」


「どれぐらいお支払いしましょうか」


「まぁ貸し一つってことにしといてもらおうか。

あんたはなかなか頼れそうだからね」


「分かりました。少し怖いですけど……手伝えることがあったら言ってください」


「くくっ、怖いってことが分かれば十分さ。

仕事が山積みだからね、そろそろ帰らせてもらうよ」


「じゃあエバンス商会まで連れていくわね~」


「本当にありがとうございました」


 ミリアが手をつかんだと思ったら二人ともいなくなってしまった。

たしかにあれで不法侵入されれば手の打ちようがない。


「では我も帰るとするかな。

サイトウよ励むがよい」


「じゃあな、開店したら食べに来てくれよ」


 こうしてアスも帰って行ったのだが……ドアからでる人に違和感を感じる不思議。

 

 とりあえず当面の方針は決まったかな。

生きるために店を始めようと思ったのに土地を手に入れるという野望までできてしまった。

できるかどうかもあやしいし大変になることも目に見えている。

それでもどこかわくわくしてしまう俺は楽天家なんだろう。


 さて、がんばっていきますか。



今回は少し真面目な感じのお話です。

……真面目になってたらいいな。


評価・感想よろしくお願いします。

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