三人集まってもできないことはできません。
こんにちはみなさん。
先ほどお茶を出してしまったので「粗茶ですが」のセリフが使えません。
それにしても「粗茶ですが」っていい言葉だと思いません?
「おじゃましま~す」
「失礼するぞ」
「はいどうぞ」
とりあえずカウンターに座ってもらう。自分はカウンターの奥に。
無駄なのはわかっているけど形式美として聞かねばなるまい。
「ここで飲食店を開こうと思ってるんですけどどうでしょう?」
「うむ、わからん」
「そうね~、かわいさが足らないみたいだからピンクを基調に、と言いたいところだけど……」
おーけー。一人目は想定通りです。
しかしミリアさんがまともな意見を出しそうな異常事態。
アスフェルちゃんも目を見開いております。
「男の子のお店なんだからかっこいい方がいいわよね。
任せなさい、私がたくさん武器とか剥製とか集めてきてあげるから~」
おーけー。二人目も想定通りです。
あ、アスフェルちゃんが眉間押さえながらため息ついてる。
「ミリアさんありがとうございます。
でもそれじゃあ小さい子や女の人が入りにくいと思うんですよ。
お気持ちだけ頂いておきますね」
「そう? 残念ね~」
「それよりもミリアさんには商売していくうえで注意すべきこととか聞きたいですね。
商売なんてするの初めてなのでよろしくお願いします」
「私はみんなに頼まれたことをしてお金をもらってるだけだからよくわからないわ~。
ほとんど一人でできるから人を使ったこともないの」
なんという残念なハイスペック。センスも含めて切に思う。
「しかしサイトウよ。そなた失敗できないのであろう?
商売をしたことがないのなら、何を商うのかも含め一度その道の者に相談した方がよいのではないか?」
たしかに正論だ。
いくら魔法があるといっても簡単にうまくいくほど商売は甘くないはずだ。
相談できるならぜひともしたい。
「俺もそう思うよ。ミリアさん、グランさんなら知ってるでしょうか?」
「たぶん知らないと思うわ~。
グランちゃんどうしても払えない人がいたらタダみたいな値段で巣穴掘ってあげちゃうもの。知ってるとは思えないわ~」
男前ですグランさん。
そんなあなたがリアルに想像できます。
「でも安心して。私の知り合いにまさに商売人って子がいるから紹介してあげる。
ただこれについては何でも屋として報酬をいただくわ」
「当然ですね。どのぐらいお支払いしましょうか?」
ミリアさん、満面の笑みが不安を催します。
「私にもアスちゃんと話すみたいに普通に話して。それが条件よ」
「そんなことでいいんですか?」
「距離置かれてる感じがしてちょっといやだったのよ?
じゃあ交渉成立ね。
今連れてくるからちょっと待ってて」
そういうとすぐに扉から出て行ってしまった。
急いで追いかけるが当然のようにそこにはいない。
……あの人ほんとに何者だよ。