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第9話 遅咲きの勇者

「勇者?魔神?」


「はい、創造神様からの神託です。はじめてですこんなこと」


この場は冷える。場所を僕の部屋に移し、ミリアから詳しく話を聞く。


夜、いつものように創造神像の前で一人で祈りを捧げていた。


すると周りに人がいないのに声が降ってきた。


神を名乗ったその声は、この世に封印されている魔神について語り出したという。


今後複数の魔王が手下の魔物や魔族を遣い、魔神を復活させようとするそうだ。


一定の周期で発生する魔王は皆魔神の復活を目論んでいるが、今から数年後、周期が重なり複数の魔王が発生する。


魔神の封印は大量の人間の魂によって解けていく。


封印は全部で9カ所。このワルート島にもあるということだ。


つまり、魔王が誕生し、配下を使ってこの島にある魔神の封印を、島民の大量虐殺によって解きにくると。


そして聖剣を手にすることが出来る勇者として僕に白羽の矢が立ったわけだ。


「でも僕は勇者じゃない。勇者というなら他のクラスメイトがいるよ」


「そこまでは神も言及しませんでしたが、勇者はタケルさんしかいませんよ」


ミリアはニコニコしながら語ってくれる。


「そうかな」


「はい!」


なんだか照れくさいな…。


「でも島のみんなが危険に晒されるのを黙って見ていることは出来ないよ」


「タケルさんならそう言ってくれると思ってました」


よし、そうと決まればキリカさんに修行をつけてもらいつつ、旅の準備をしなければ。


「旅ですか?」


「そうだ。強くなるための旅、同じ目的の仲間を探す旅だ。複数の魔王を僕とミリア2人で倒そうなんて考えはない。仲間とこの世界を、この島を守ろう」


「いいですね…。私も外の世界を見たいと思っていました。それにもっと実力をつけないといけませんし」


「よし、そうと決まれば明日アリルさんに頼んで、大陸に連れて行ってもらおう」


「おー!」


――――――――


次の日の朝、アリルさんが宿泊している商船にミリアと赴く。


キリカさんが寝所の前で警備していた。


この人、寝ないで警備してるのか?いや、多分違うだろう。きっと。


「タケルか。ミリア嬢もどうしました?」


「今日はアリルさんと話がしたくてきたんだ。キリカさんも同席してくれたら嬉しい」


「ん。わかった」


そう言うと寝所にノックをして入っていくキリカさん。


しばらくして出てきたキリカさんに広い船長室に案内される。


少ししてアリルさんが慌てた様子で入ってきた。


「これはこれは、どうしましたかな?」


「じつは――」


2人にミリアに下った神託の話をする。


アリルさんはとても驚いた様子で、途中から食い入るように聞き入っていた。


キリカさんは、最初こそ驚いたようだったが、その後はなにか深く考えているようだ。


「ということで、大陸まで連れて行ってください。お願いします!」


「いやいや、頭を上げてください。大陸まで連れて行くのはわかりました。旅は道連れ世は情けですからな。しかし…」


「勇者…。聖カリファ王国で召喚されたと聞きましたな。今回も戦争に使うのかと思っていましたが、魔神、いや魔王対策だったか」


戦争?いや、そんな感じでは………追放された僕が何をいうのか。


「僕はその国で召喚されました」


「なに!いや、そうだとすると君は称号を持っているはずだ。召喚された勇者は皆、『召喚勇者』の称号を持つ」


「その称号はどうやって確認するんですか?」


「………なるほど、称号は持っていないんだな。……ああごめん。称号はスキルを調べるときに一番上に出てくるんだよ。だから、それを知らないという君は称号を持っていない」


僕はほんとに勇者じゃなかったということか。


でもそうだとしたら、神の神託は?


「称号を持っていても持っていなくてもタケルさんは勇者です!これからなるんです」


「ミリア………。ありがとう」


「ごほん。まあ、いずれにしても強くならなければ守りたいものも守れない。その心意気やよし!困ったときには頼って欲しい」


「アリルさん、ありがとうございます」


「私も出来ることがあれば言ってくれ」


「キリカさんも……、ありがとうございます」


そのあと、ミリアと共に島民に冒険へ行くことを告げて回った。


みんな驚き、応援してくれる人もいれば、悲しみ泣き出す人もいて、ここは第2の故郷なのかもしれないと感じた。


そして1週間後。


まだまだキリカさんには勝てないけれど、この間は良い勝負だった。


もう少しで勝てそうな気がする。


しかし、この修行もいったん中止だ。


なぜならば出発の時が来たからだ。


ほとんど全島民がお見送りに来たせいか、港は人でごった返している。


「毎回こうなんですか?」


「いや、今回はタケルやミリア嬢が旅立つからだろう。凄い人たちだな」


キリカさんはしみじみ語る。


「そうか、僕たちのために」


「そう。君たちのために」


僕とミリアはデッキから身を乗り出した。


「おーーい!!必ず帰ってくるから!勇者になってみせるから!」


「魔王を倒せるくらい強くなりますから!タケルさんと一緒に!」


アリルさんの帆船は帆を張るなりぐんぐんスピードを上げ、港を後にする。


あれだけ騒がしかった港の喧噪もすぐに聞こえなくなり、波と風を切る音だけが聞こえるようになった。

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