第7話 恋人として
「うわあ、大きい船だねミリア」
「そうですね!ここまで大きな船は島にありませんもの!」
ある日のこと、大きな帆船が島の港に入港してきた。
そのことが警備隊経由で僕の元まで聞こえてきたのだ。
その船は商船で、1年に1回ほど島には無い品物を売りに来る。
島にはいない魔物の素材でできた装備品や宝飾品、大陸での情報などを売り、食べ物を買い求めるそうだ。
「食べ物買ってどうするんだろう。船旅の途中で腐りそうなものじゃない?」
「この商隊の主、アリルさんはアイテムボックスのスキルを持っているとか。アイテムボックスの中に入れておけば腐りませんから」
え、なにそのスキル。
「そんなスキルがあるのか…。どうやったら入手できるのかな」
「アイテムボックスの中に手を入れると素質のある人は覚えることができるとかできないとか。やってみなければわかりません」
むむ。これはお友達になる必要があるかも。
そんなたわいもない話をしていると、船の周りで動きがある。
もう荷物などを積み下ろししていたのだが、船からフルプレートメイルを着た、騎士のような人と頭が中途半端に禿げ上がった中年の男が降りてきた。
「あ、あの人がアリルさんですよ」
あのとは、どちらだろうか。おそらく中年の方だな。
「おお、これはミリア殿、会う度にお綺麗になられて!」
「お久しぶりです。アリルさんはお変わりありませんね」
やはりそのようだ。
しかし、近づいてわかるこの輝き。
いや、騎士さんの甲冑のことだよ?
でもこの威圧感、少し武を学んだものならわかる。ただものではない。
「いやはや…。おや、この方はミリア殿の――」
「この方は、私のこ、こ、こい――――」
「僕のことですか。ミリアは僕の恋人です」
ここは、これだけは自信を持って言える。
ミリアを含めアリルさんも騎士さんも驚いているようだ。
ミリアは頬を染め、アリルさんはこちらを興味深そうに、騎士さんは兜を取って観察している。
って、騎士さんは女の人だ!燃えるようなオレンジの髪を後ろで結んでいる。
「驚いた。君がミリア嬢の恋人とは。だが、ミリア嬢の様子を見れば本当なんだろう」
うんうん、と騎士さんは頷いている。
「しかし、ミリア嬢は聖職者であると同時に才能ある治癒師だ。普通の男に恋人が務まるかね?」
ん?なんかカチンと来る物言いだな。
「自慢じゃないが、僕に教えられる人はもうこの島にはいない。僕が1年間修行を頑張ったからだ」
「いや、それは自慢だぞ。…ゴホン!じゃあ手合わせしてくれないだろうか?彼女に見合う男さん?」
いいだろう。
僕たちは演習場に場所を移すことになった。
ミリアのことだから止めに入るかと思われたが、彼女も乗り気な様子。
アリルさんは面白そうに後をついてきた。
演習場にはフィリがいたので審判になってくれるように頼む。
「いいのか?タケルは確かに強くなったが…」
「まかせて、なんとかなるさ」
お互い向き合い、一礼。
そして模擬刀が交差する。
こちらは魔力探知で魔力の流れを見ながら次の一手を瞬時に導き出す。
魔力探知を使って気づいた。この人全く隙が無い。
打ち込んでも打ち込んでも防がれる。
それどころかこちらは隙だらけだということに気づかされる。
模擬刀であるが、相手の技量が高すぎるあまりこちらに切り傷が増える。
そうか!体に魔力を纏わせる魔闘法を使っていたので気づくのが遅れたが、模擬刀にも魔力を流して、見えない刃を形成しているのか!
そうとわかれば負けはしない!………もっと早くわかっていればの話だが。
模擬刀を弾き飛ばされ、喉元に相手の模擬刀が突きつけられる。
「勝負あり!」
「なんだ、自慢していたほどではないな」
くううう。悔しい。
「タケルさん、大丈夫ですか…?」
ミリアが駆け寄ってきて回復魔法をかけてくれる。
その横顔を見ながら、こう思う。
彼女は僕に自重しろと言いたかったのではないだろうか。
思えば、師匠達よりも強くなって、この島でも強い部類になり、天狗だった。
もっと強くならねば。
慢心なんてしている暇は無いのだと思った。




