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第4話 堕ちてなお

足は4日で良くなった。


とはいえまだ引きずりながら歩いているが、これもそのうち良くなると思われる。


銀貨はその間の食費となって消えてしまった。


寝床は野宿である。


「最初から無くなるのがわかってたなら冒険者になるべきだったなあ」


もうそう言っても遅いのはわかっている。


だから、また稼ぐしかないのだ。


工事現場に再び行き、チーフを探す。


「あ?ああ、あの人ならまた別の現場に行ったよ。他の町で工事だってさ」


「じゃあ今のチーフを呼んでください。おねがいします」


あのスキンヘッドはもう見られないのか。


最後のお別れもしてないのにな、としみじみ思っていると、新しいチーフが来る。


今度は短髪でバンダナを巻いている中年のおじさんだった。


「で、俺を探してるって?」


「そうです。また働かせて欲しくて」


「今は手が足りてる。ではな」


ちょっと待ってほしい、手が足りてるとはどういうことか。


「お前さんを解雇してから2人雇ったんだよ。だから資金的に無理だ」


「じゃあどうすれば…」


「またギルドに行ったらどうだ」


なんということだ。ふらふらと後ずさりし、違和感の残る足を引きずる。


どうして、どうして。いくら自問を続けても出てくる答えはない。


足を引きずってまたギルドに向かえというのか。


しばらく呆然とその場に立っていたが、事態は改善しない。


そして僕は歩き始めた。ギルドへ。


――――――


「もう君に紹介できる依頼は無いね」


「無いんですか」


もうどうにでもなれ。


「わかりました」


「また依頼入るかもしれないから諦めないで!」


おなかが、すいたなあ


僕は重い足取りでギルドを後にした。


――――――


それからというもの、無事に歩けるようになった僕はホームレスのような暮らしをしていた。


朝、日が昇ると同時に起き、ゴミを漁る。


家々の後ろにゴミ置き場がありそこを漁るのだ。


盗みをすることも考えたが、この僕が捕まらない保証は無い。


そのような危ない橋を渡らずに過ごすのはゴミ漁りしかない。


学ランが汚くなってきたら、ゴミとして捨てられていた服を着る。


こうして現地人と見分けがつかなくなっていく。


超天然ダイエットのおかげか、お腹も引っ込んできた。嬉しい誤算だが、それを認識する余裕は無い。


日々腹ぺこなのだ。


この前は腐った物を食べてお腹を壊してしまった。


元の世界の時間で1週間は腹痛と闘っていただろうか。


食べ物を求めてさまよい歩く姿は、ゾンビそのものである。


「元の世界に帰りたい」


その一言は風に乗り、広い空へと抜けていった。


ホームレスとしての暮らしは半年に及んだ――


――――――


ある日、その日は嵐が来そうな風の強い日だった。


王都の壁際にいた僕は壁に穴が開いているのを発見する。


「体をねじ込めば外に出られる?」


王都は壁で外と隔てられているが、それは魔物から市民を守るためである。


しかし、出入りには市民権のあるなしが重要になってくる。


あるものはギルドカードを、あるものは市民章を見せることで出入りが可能となっている。


つまり、僕は壁の外に出られない。


一度試したときに酷い目に遭った。


うんしょっと、体を横にして穴を通り抜ける。


その時初めて、「痩せたんだ」と気づいた。


なにか野いちごのようなものでもないかと辺りを見回す。


ここは街道から離れた場所のようだ。遠くに森が見える。


「森へ行こう」


森へは2時間ほどかかったが、魔物もいないし平和そのものだった。


しかし、天気は荒れてきて雨も降ってきた。


体洗えてラッキーと、常人なら思わない事を思いながら森へ入る。


木の実でも見つけないと待っているのは餓死だ。


「キノコとか食べられるのかな…」


そんなことを呟きながら奥へ立ち入る。


すると後ろから誰かがやってくる音が聞こえた。


栄養失調でふらふらしているからか、気づくのが遅れた。


「だれだ!」


「す、すいません!いま出て行きますから!」


ん?なんだか聞いたことがある声だな。


「なんだゴブリンか?」


「んん?おいこいつデブタケじゃね!?」


なんともなつかしい呼び名だ。


こちらもよく見ると、フルプレートメイルに身を包んだ――


「寺田?」


「へえ、生きてたんだ。死んだと思ってたぜ」


やな奴らだ。元の世界で僕をいじめていた主犯寺田と橋本、武田、佐々木と今野だ。


この5人はいつもつるんでいて寺田がリーダーだ。


「訓練で来てみれば奇遇だな!」


「痩せたのか?じゃあブタケだな!」


「殴りがいがないじゃないか」


「そうだな、あの弾力で殴りやすかったのにな」


それぞれ思い思いのことをいっていやがる。


「ちょうどいい、デブタケ。魔法の実験台になってくれや」


そう言うと寺田は呪文を唱える。


「ファイアボール!」


ヒュッ、っと僕の顔の横をバレーボール大の火球が飛んでいった。


「ひっ」


「おっとはずしたなあ」


死。


それを感じさせる火球だった。


クルリと森の奥を向くと、僕は一目散に逃げ出した。


死ぬ!今度こそ死んでしまう!


「おい待てよ!」


ゲラゲラと笑いながら寺田達は火魔法、雷魔法、水魔法と魔法を繰り出しながら追ってくる。


天気はより荒れてきて、ザーザー降りになっても火球の威力は衰えなかった。


「はあっ、はあっ」


「まてまて、あはは」


気が狂っている。


一人の人を殺すことに罪悪感なんて感じていないようだ。


もう逃げるのも限界…、その時、森から出てしまった。


もう遮る物は何も無い。


それどころか――


「崖だ…!王都って沿岸だったのか!」


そう、断崖絶壁が姿を現した。


その下は海が荒れ狂い、大きな波が崖に打ち付けている。


「もう終わりだぞデブタケ」


そう佐々木が言う。


「そうだ、死んじゃえ!ファイアボール!」


ひときわ大きな火球がこちらへ向かってくる。


体にぶつかる前に海に飛び込むしか無い。


いや、間に合わない。


じゅうううう


「ああああああ」


とっさに避けたが、顔の右側をかすめて火球は消える。


あつい。痛い。目が開けられない!


「あああ」


「ちっ、もう一発!」


最後に聞いたのはその一言だった。


顔の痛みでふらついた僕は足を滑らせ、崖下へ落ちていった。


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