第5話 「正義、錆びた夢」
戦いのあと、夜の南公園には、焦げた匂いと土の匂いが混じっていた。
五人は誰も言葉を発せず、ただ静かにその場に立ち尽くしていた。
やがて、赤地面に座り込む。
「……なぁ、これ、何だったんだろうな。」
ブルーの青木が答える。
「記録は取れなかった。監視カメラにも何も映ってない。
つまり、俺たち以外には“見えてなかった”可能性が高い。」
「……ってことは、やっぱ俺たち、勘違いヒーローってこと?」
楓が苦笑する。
スーツの胸元を軽く叩くと、皮素材がパシンと音を立てた。
「それでも……」
桃子が月を見上げる。
「確かに“何か”を感じたのよ。
あの黒い影、あれは…私たちの中にあるもの、だった気がする。」
緑山が静かに頷く。
「悪意って、誰にでもあるのよ。
隠してるけど、疲れた心の隙間に、ふと顔を出すやつ。」
赤城が、拳を握ったまま呟く。
「……それでも、放っておけねぇ。
俺たちにできることがあるなら、もう一度——燃えるしかねぇだろ。」
沈黙。
だが、その言葉に、全員の心が少しだけ温かくなった。
その時、五人のスマホが同時に光る。
画面には、またしても例のロゴが浮かんでいた。
> 『悪意反応、拡大中。次の対象:市街エリア、商店街ブロック。』
「……まだ終わってねぇってか。」
青木が立ち上がる。
楓はため息をつきながらも笑った。
「まったく、休ませてくれないわね。」
桃子はスーツの袖を整える。
「でも、悪くないわ。
久しぶりに“生きてる”って感じがするもの。」
静が言った。
「アラフォー戦隊、復職二日目ね。」
赤城が笑う。
「……よし、次も“ガチ”で行くぞ。」
五人のスマホが共鳴するように光を放つ。
夜風が吹き抜け、マフラーが一斉にたなびいた。
彼らは歩き出す。
もう、昔の夢じゃない。
今度は現実で戦うために。
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