第95話 防護服デザイン会議
ローザのショップの奥。大きな机の上には、紙と羽根ペン、それからカラフルな布見本がずらりと並んでいた。
「さて! まずは自己紹介からねぇ」
ローザは腰に手を当て、堂々としたポーズを取った。
「アタシの名前はローザ。メインは服飾師、サブは斧使いよ! 戦場でも布を裂かない心意気で斧を振るうの、素敵でしょ?」
にっこりと笑いながら、3人に視線を送る。
「まずはリントちゃん!」
ローザが両手を広げ、幼獣を見つめる。
「白銀の毛並みと瞳、まるで雪原に咲く小さな花よ! 守るより着飾る方が似合うくらい可愛いわ!」
リントは照れたように「ルア……」と小さく鳴き、シアンの後ろに隠れた。
「次はシアン。あんた、見た目は大好物よ。黙って立ってれば絵になるし、少し過保護なとこもギャップでポイント高いわぁ!」
「ちょっ……! 勝手に評価しないでくれ」
シアンが赤面し、ロアスが横目でじっと見ている。
「そしてロアス……あんた、無口でクール。影みたいに寄り添うその姿、もう背筋ゾクゾクよ。……タイプだわぁ」
ロアスは反応せず、ただ無言で隣に座った。
その空気にリントがくすっと笑い、場が和む。
「はいっ、仲良くなった記念にフレンド交換しちゃいましょう!」
ローザの提案でフレンドリストに新しい名前が追加され、軽快な通知音が響いた。
「じゃ、肝心のデザインに入りましょ」
ローザが手早くスケッチを描き始める。
「まずはアタシ推しの派手タイプ! 毛並みを活かす白銀ベースに、虹色の羽飾りを背に! 戦場でも目立つこと間違いなし!」
「いや、そんな派手なのは……リントが狙われるだろ」シアンが即座に否定する。
「じゃあ次、シンプルに黒のレザー。軽量で防御力は十分。動きやすく、余計な装飾もなし」
「それだ」シアンは即答するが、ローザは首を振った。
「機能性は良いけど、夢がないのよねぇ」
数枚のスケッチが広がっていく。防御と俊敏性を両立したもの、毒耐性を組み込んだ特殊布を使用するもの、軽い鎖帷子を組み込んだもの。どれも機能性は十分だ。
「……じゃあ、リントが決めなさいな」
ローザが紙を広げると、幼獣はしばらく考え込んだ。やがてちょんと前足で指したのは――かわいらしい丸耳フード付きの白い防具だった。胸元には小さな紋様が刻まれている。
「これがいい!」
「やっぱりそっち選ぶのか……」シアンが苦笑し、ローザは両手を叩いた。
「いいわねぇ! 可愛いし、守りもばっちり! ただし、素材は特注よ。毒耐性の糸、俊敏を上げる羽毛、防御を高める鱗革……全部アタシが揃えると高くつくわ」
「なら、自分で集める」シアンが即答した。
「ふふ、頼もしいじゃない! じゃあ次は、素材集めに出発ね!」
ローザの笑みは、豪快で、どこか頼れる匠のそれだった。
リントの防護服デザインが決まりました! 派手とシンプルの間を取って、可愛らしくも機能的な装備になりそうです。次は素材集め編へと進みます。
次回も18時更新です!




