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第93話 幼き守護の一歩

森の中を進んでいると、茂みの奥から唸り声が響いた。次の瞬間、牙をむいた大型の狼型モンスター《ダークハウンド》が飛び出してきた。

「来るぞ!」

シアンは凍光包丁を抜き構える。ロアスが前に出ようとしたその時――。


「シアン、危ないっ!」


リントが弾かれるようにシアンの前に飛び出した。

巨体の爪が振り下ろされ、リントの細い体が弾き飛ばされる。


「リントッ!!」

シアンは目を見開き、すぐに包丁を構えて斬り込む。凍光の刃が閃き、氷結魔法を重ねて敵の動きを鈍らせる。

ロアスも横から突進し、強烈な蹴りを狼の脇腹に叩き込む。鈍い音とともに巨体が倒れ伏し、森に静寂が戻った。




「リント! おい、しっかりしろ!」

駆け寄ると、小さな体は血に濡れて震えていた。それでも幼獣は震える声で言った。

「……シアン、怪我……してない、でしょ?」


「バカっ! なんで体で受けるんだよ!」

怒鳴りながらも、シアンの手は震えてリントの体を抱きしめる。

「魔法が使えるんだろ? なんで……」

「気づいたら……体が動いちゃったんだ」

リントの目が潤み、声がかすれる。


ロアスが静かに近寄り、低く言葉を落とした。

「……守ることと、犠牲になることは違う。力を抑え、技を学べば……傷つかずに守れる」

それだけ言って、静かに隣に腰を下ろす。その背中は温かく、無言の教えを物語っていた。




「大丈夫だ、リント。今から治してやる」

シアンは幼獣を抱き上げ、街の教会へと急いだ。石造りの礼拝堂の中、清らかな光が差し込む。

神官NPCが祈りを捧げると、リントの傷口からやわらかな光が広がり、赤い血が消えていく。


「……あったかい……」

リントは小さく呟き、安堵の息を漏らした。

神官が微笑む。

「この子は強いですね。大切にしてあげてください」


シアンは深く頭を下げ、リントをそっと撫でた。

「お前は……もう立派な仲間だよ」


リントの尻尾が小さく揺れ、弱々しくも笑顔がこぼれる。

その姿は、確かに仲間としてここに存在していた。


リントが初めて“仲間を守ろうとした一歩”は痛みを伴いましたが、その選択は確かな絆となりました。次回も18時更新です。どうぞお楽しみに!

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