第88話 凍光鉱石を求めて
王都冒険者ギルド。掲示板の一角に、ひときわ目立つ依頼が貼られていた。
《依頼:凍光鉱石の回収》
《推奨レベル:15以上》
《依頼内容:王都北方“氷結洞”に眠る凍光鉱石を採取せよ》
「凍光鉱石……氷の輝きを宿す鉱石、か」
シアンが呟くと、受付嬢NPCが声をかけてきた。
「この依頼、報酬も良いのですが難易度も高いです。洞窟には氷をまとったゴーレムが徘徊しています。ご注意を」
氷魔法使いにとって氷属性の敵は相性が悪い。だが、その分挑みがいがある。
「……受けます」
シアンは依頼票を受け取り、ロアスとリントに目を向けた。
「行こうか」
「氷の相手か……面白い」
「ぼく、がんばる!」
氷結洞。
内部は青白い氷柱が並び、吐息が白く凍るほどの冷気が漂っていた。
「視界が歪むな……冷気のせいか」
シアンは慎重に足を進める。やがて、鈍重な足音が響いた。
ゴーレム。氷の巨体が姿を現す。
「来たか……!」
シアンは即座に氷魔法を展開する。
「《氷華刃》!」
無数の氷の花弁が刃となり、ゴーレムへと降り注ぐ。だが氷をまとった体はダメージを通しにくく、わずかに表面が削れただけだった。
「効きが悪いな……」
「なら、俺が砕く」
ロアスが疾駆し、蹴りでゴーレムの足を粉砕する。リントが背後に回り込み、光の弾を放って援護。
シアンは攻撃を切り替える。
氷魔法をただぶつけるのではなく、温度差で亀裂を生み出す。
「……《氷結封陣》!」
床一面を凍らせ、ゴーレムの足を拘束。その隙にロアスの蹴りが決まり、ゴーレムは砕け散った。
残された氷の瓦礫の中に、青白く輝く鉱石が眠っていた。
「これが……凍光鉱石」
依頼を終え、王都に戻ったシアンは鍛冶ギルドを訪れた。
「この凍光鉱石を……包丁に組み込めますか?」
鍛冶師NPCは驚いた顔をした。
「戦闘用の剣ではなく、包丁に? ……珍しいことを言うな。だが可能だ」
やがて炉から取り出された包丁は、刃に淡い青光を宿していた。
「切れ味が上がり、冷気を帯びるだろう。調理にも戦闘にも使えるぞ」
シアンはそれを握り、息を吐いた。
「料理と戦い、両方で輝く……これでまた一歩、自分らしい道が進める」
ロアスは渋く頷き、リントは「新しい包丁!かっこいい!」と目を輝かせた。
こうして、凍光鉱石の包丁は彼の手に渡った。
凍光鉱石を素材にした新しい「包丁」が完成しました。
戦闘と料理、どちらにも活かせるシアンらしい武器になりそうですね。次回も18時更新です!




