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第84話 花を育てる手のひら

王都の花市場を歩いた翌日、シアンの胸には小さな決意が芽生えていた。

「……花を育ててみたいな」


マイホームの庭に花が咲けば、ロアスやリントと過ごす時間ももっと彩りを増す。だが、ステータス画面を開くとスキルポイントは残っていない。

「スキルがないと、花育成は難しいか」

ため息をついたその時、昨日の市場で声をかけてくれた花屋のNPC女性の言葉を思い出した。


――「本気で花を育てたいなら、知識を学びにおいで」



市場に戻ると、NPCの女性がにこやかに迎えてくれた。

「来てくれたのね。やっぱり花を育てたいのかしら?」

「はい。マイホームで……庭に花を咲かせたいんです」

「ふふ、それは素敵ね。なら、特別に教えてあげる」


彼女が差し出したのは薄い冊子のようなもので、草花の基礎知識がぎっしりと書かれていた。種の蒔き方、水やりの頻度、陽の当たり具合。話を聞くうちに、シアンの視界にシステムメッセージが浮かぶ。


《新スキル【花育フローリスキル】を習得しました》


「これで君も花育ての仲間入りね」

「ありがとうございます!」

シアンは深く頭を下げた。



「ただ育てるだけじゃ物足りないでしょう?この市場で売っている“ランダム種”を試してみなさいな。どんな花が咲くかは、育てる人との縁次第」

NPCが差し出した袋を受け取り、シアンは植木鉢も購入することにした。木製の素朴な鉢に土が入れられ、準備は整った。


帰路、ロアスが小さく笑った。

「花まで育てるか……本当に落ち着かないやつだ」

「いいじゃん!きっと庭がきれいになるよ!」リントは尻尾を振りながら袋を覗き込んでいる。



マイホームに戻り、庭の一角に植木鉢を置く。袋を開くと、中には大小さまざまな種が混ざっていた。どんな花が出るのかはわからない。


「……楽しみだな」

そっと土に埋め、氷魔法で軽く冷気を送り込み、水分を整える。

「芽が出たら、毎日見に来よう」


種はまだ眠っている。けれど、それはきっと、昨日の花市場で感じた鮮やかさを自分の庭に呼び込む始まりだ。




空を見上げると、春めいた風が庭を吹き抜ける。小さな植木鉢の中で、まだ見ぬ色が芽吹くのを静かに待ちながら、シアンは温かな胸の鼓動を感じていた。


今回はマイホームに新しい楽しみを持ち帰る回でした。次回も18時更新です。

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