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第81話 氷華の刃、その名は

試験を終えたその瞬間、胸の奥に冷たい光が芽吹いた。

シアンの視界に、システムウィンドウが浮かび上がる。


【新スキル獲得:氷華刃ひょうかじん

【効果:氷魔力を収束し、花弁のような刃を生み出す。斬撃に氷結付与(小)。】


「……氷華刃」

呟くと同時に、手の中に青白い輝きが集まる。氷が花のように開き、瞬く間に鋭い刃を形作った。刃先がきらめき、周囲の空気を凍りつかせる。


「すごい……」


試しに素振りをすると、空気を裂く音と同時に、残光のような氷結の花弁が舞った。それは美しくも冷たく、戦闘の力強さを宿していた。


「これなら……前に出ても、もっと戦える」

力強く握った手が震える。恐れではない。自分の選択が形となった喜びに、体が震えていた。



訓練場を後にし、王都の街並みへと戻る。

石畳の道を歩くと、屋台の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。昼の喧騒、商人の声、プレイヤーたちの笑い声……そのすべてが、戦いの冷気を和らげてくれた。


「シアン、おかえり」

ロアスが腕を組んで立っていた。相変わらず無表情だが、その声には僅かに安堵が混じる。

「おかえりー! 試験どうだった?!」

リントが勢いよく駆け寄り、尻尾をぶんぶん振った。


「成功だ。新しいスキルも手に入れた」

そう言って氷華刃を展開すると、リントは目を丸くし、ロアスは小さく口元を緩めた。


「きれい……花みたい」

リントの声が街のざわめきに溶けていく。氷の刃は一瞬だけ輝き、すぐに霧のように消えた。


「でも、今日はもう戦いは終わり。帰って、飯にしようか」

シアンは肩の力を抜き、二人に微笑んだ。



マイホームの小さな空間に戻ると、夕暮れの光が庭を照らしていた。

シアンは氷魔法で鮮度を保った魚と野菜を取り出し、簡単なスープを作り始める。かまどの火がぱちぱちと鳴り、湯気が部屋を温める。


「今日は特別だからな」

香草を加え、氷魔法で冷気を調整しながら煮込むと、まろやかな香りが広がった。


ロアスは黙って椅子に腰かけ、リントはテーブルに顔を乗せて待っている。

「はい、完成」

湯気の立つ器を置くと、二人の顔がふっと明るくなる。


「……うまい」

ロアスが短く言い、リントは「シアン最高!」と声を弾ませた。


戦いの冷気と、家の温もり。その対比が胸に染みて、シアンは静かに笑った。

「よし……明日からは、この新しい力を試していこう」


食卓の上に湯気が立ちのぼり、氷の華は静かにその夜を彩っていた。


新しい氷魔法《氷華刃》を手に入れたシアン。次回は18時更新です。

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