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第80話 氷の選択と、新たな一歩

選ぶということは、時に自分の未来を決めることでもある。

迷いと覚悟、そのどちらも抱えながら挑む物語です。


「一等料理師……」

ギルドで授与された証を見下ろし、シアンは胸いっぱいに息を吸った。料理職のランクアップは大きな達成感を与えてくれた。けれど、その勢いはすぐ次の目標を呼び覚ます。


「……氷魔法も、このままランクアップを目指すべきだよな」


王都の石畳を歩きながら、心の中で繰り返す。氷魔法には二つの分岐がある――戦闘強化か、支援強化か。


自分はこれまで、包丁と体術で近接戦闘をこなしつつ、氷魔法を攻撃と補助に使ってきた。けれど、もし支援に特化すれば、ロアスやリントをさらに強く後押しできるだろう。


「俺は……戦う側か、それとも支える側か」


ふと胸が重くなる。ロアスが果敢に蹴りを放ち、リントが幼いながらも冷気で仲間を守る姿が脳裏に浮かぶ。その隣で自分は、どうあるべきか。


だが、最後には笑みがこぼれた。

「一緒に戦いたい。俺も前に出て、肩を並べて成長していきたいんだ」


その決意を胸に、戦闘系の氷魔法を選択した。



試験会場は、王都郊外の訓練場。雪の結晶を象った魔法陣が淡く輝き、冷気を纏う空間が広がっている。


試験官NPCが告げる。

「第一課題――制限時間内に、氷魔法のみで標的を討伐せよ」


現れたのは氷耐性を持つ魔獣。爪が鋭く、俊敏な動きで迫ってくる。

シアンは咄嗟に《フロストランス》を放つ。だが、直撃しても氷が砕け散り、思ったよりダメージは通らない。


「くそ……効きにくい!」


焦る心を抑え、魔力操作で氷を凝縮させる。放った《アイスバースト》が地面を覆い、動きを鈍らせた隙に、続けざまの《クリスタルスピア》で貫く。魔獣は霧氷の中で崩れ落ち、課題はなんとか達成となった。


汗が滲む額をぬぐう暇もなく、二つ目の課題が始まる。


「第二課題――氷魔法を用い、与えられた陣地を防衛せよ」


小さな石造りの拠点に、次々と模擬モンスターが襲いかかる。剣も包丁も使えない。許されるのは氷魔法のみ。


「――やってやる!」


両手を広げると、氷壁が音を立てて伸び、敵の進路を塞ぐ。突破しようとする影には《スノーバインド》を絡ませ、足を凍結させて動きを封じる。

しかし数が多く、次第に陣地へ迫ってきた。


「耐えろ、俺の魔力……!」


魔力が削られ、視界が揺らぐ。それでも歯を食いしばり、氷を砕かれても新たに築き、風雪で追い払う。

そして最後の一波をしのぎ切った瞬間、鐘が鳴り響いた。


――合格。


その声に、シアンは力が抜けるように膝をついた。

魔力をほとんど使い切り、呼吸は荒い。けれど胸の奥には確かな実感があった。


「俺は……前に立ち、戦う魔法使いでいく」


氷魔法が、さらに進化する瞬間だった。


戦闘試験を乗り越え、氷魔法の道を選んだシアン。次回も18時更新です。

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