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第74話 煌めく王都と新たな鼓動

王都に足を踏み入れた瞬間、世界がまたひとつ広がる。

いよいよ、王都と接続されたばかりのゲートへ近づくと、石の内部に《ラディアント・ベイル》の文字が浮かびゲートを通る。


石畳の道に靴底が触れるたび、かすかな反響が耳に心地よく返ってくる。

 城門を抜けた途端、目の前に広がったのは、まるで絵画から飛び出したような王都の街並みだった。


 遠くそびえる白亜の城は、午後の陽を浴びて宝石のように輝いている。その城から放射状に延びる大通りは、色とりどりの建物に縁取られ、窓辺には花々が溢れんばかりに咲いていた。濃い香りが風に乗って漂い、甘いものとスパイスが混ざった独特な匂いが鼻をくすぐる。


 大通りの両脇には、果物を山積みにした露店、香ばしいパンを焼く屋台、武具や防具を並べた商店がぎっしりと並び、行き交う人々の声が重なって、街全体が生き物のように脈打っていた。

 時折、魔法で冷やしたジュースを売る店や、氷の彫刻を飾ったカフェが目を引く。氷魔法使いのシアンとしては、つい足が止まってしまうほど見事な細工だ。彫刻の透明な氷の中に、小さな光の魔法を閉じ込めており、陽の光が差すたび七色に輝いていた。


「……ここは、見て回るだけで一日じゃ足りないな」

 思わず独り言が漏れる。


 道の先、広場に出ると、巨大な噴水が目に飛び込んできた。中央には翼を広げた女神像が立ち、手に持つ杖から水が滝のように流れ落ちている。水面には子どもたちが放った小舟が揺れ、周りでは吟遊詩人が竪琴を奏でていた。メロディーに誘われるように、人々が足を止め、小銭を投げ入れていく。


 通りを曲がれば、市場の活気はさらに増す。色鮮やかな香辛料の山、干した魚や肉の串、見たことのない果物――見ているだけで料理のアイデアが頭に浮かんでくる。

 特に、氷室魔法で保存された魚介は、鮮度が抜群だ。氷魔法と料理職を兼ねる自分なら、この技術を応用してもっと面白い料理が作れるかもしれない。


 ふと、王都の中心方向から響く鐘の音が耳を打った。低く、深く、胸の奥まで響く音。

 人々が自然と顔を上げ、時刻を確かめたようにまた歩き出す。

 この街には、この街なりのリズムがある――そんなことを、初めて感じた。


「さて……どこから回ろうか」

 胸の中で高鳴る鼓動とともに、シアンは足を進めた。


王都は見るもの全てが新鮮で、何度も足を止めてしまいそうです。

次回は18時更新。お楽しみに。


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