第68話 白銀の報酬と、新しい拠点
静かな日常の中で、少し遅れて届く“結果”は、過ぎた時間を彩る贈り物になることがある。
今回もまた、その一つだった。
数日後、雪霜の村イベントの集計が完了したというワールドアナウンスが流れた。
《雪霜の村イベント:全プレイヤーへのポイント配布を開始します》
《条件達成者は特別ボーナスを受け取ります》
《ランキング上位20名はキャラクター名が公表されます》
ログを開くと、そこには獲得ポイントの詳細が表示されていた。
【基本ポイント】 2,300pt
【サブクエスト達成ボーナス】 +500pt
【特別ボーナス:霜牙の幼狼との契約】 +1,000pt
合計:3,800pt
「……お、結構入ったな」
さらに下には、ランキング表があった。
上位には討伐勢や大量納品プレイヤーの名が並び、その15位に――
15位:シアン
「名前、出るんだな……」
ロアスが肩に顎を乗せ、リントは小さく鳴きながら通知ウィンドウを覗き込む。
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ランキング発表の下には、「報酬交換リスト」が表示される。
スクロールすると、色とりどりのアイコンが並んでいた。
•限定料理素材「氷華のハーブ」 50pt
•レア装備「霜晶の短剣」 1,500pt
•ペット用アクセサリー「雪花の首輪」 200pt
•固有スキル書(各種) 1,000〜2,000pt
•建築権利証「マイホーム空間(家具初期セット付)」 3,000pt
•調理器具フルセット(高品質) 800pt
•外見変更券 500pt
「……悩むな、これは」
どれも魅力的だが、シアンの視線はひときわ高額な一つに止まる。
「マイホーム空間」――自分専用のハウジングエリア。家具の配置や内装変更も自由。
拠点としての利用はもちろん、NPCや幻獣も配置可能だ。
「ロアス、リント……これがあれば、俺たちの拠点を作れるぞ」
ロアスが嬉しそうにしっぽを揺らし、リントは小首をかしげながらも近づいてきた。
その姿を見て、迷いは消えた。
**「交換します」**をタップ。
瞬間、シアンのインベントリに「マイホーム空間・権利証」が追加された。
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残りは800pt。
再びリストを眺める中で、ひとつの項目が目に入った。
固有スキル書【影渡り】(隠密系)――
足音を消し、短時間ながら敵視を解除できる。発動中は視覚感知も軽減。
「……これだな。あの時、あればもっと安全に卵に近づけたかもしれない」
交換を確定すると、スキル書が光の粒となってシアンの胸元に吸い込まれる。
ステータスウィンドウが更新され、新しいスキル欄に【影渡り】の文字が刻まれた。
「よし……これで次に何か守る時、もっとやれる」
ロアスとリントが左右から寄ってきて、まるで同意するように鳴く。
その声が、空間に小さな温もりを広げていった。
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夕暮れの街道を歩きながら、シアンは新しい拠点にどんな家具を置こうか考えていた。
暖炉、長椅子、調理スペース……そして、ロアスとリントがゆったり休める寝床。
「家って、いいな」
そう呟くと、二匹が一斉に顔を上げた。
まるで「早く見たい」と言っているように。
彼らのための場所が、もうすぐ形になる。
それは、数字や報酬以上に価値のある宝物だった。
努力の結果が形となり、新しい生活の土台が整いました。
マイホーム空間と新スキル【影渡り】が、次の物語をどう彩るのか――。
次回は18時更新予定です。




