第6話 初めての依頼と、冷たい魔法の手ごたえ
ギルドに登録したシアンは、掲示板で最初の依頼を選びます。
フィールドでの実戦に挑みますが、氷魔法の“難しさ”を知ることになります。
ギルド奥にある掲示板には、いくつもの依頼が所狭しと並んでいた。
【初心者向け】と記された依頼の中から、目を引いたのはスライム系の討伐依頼だ。
《依頼:街道外縁部に出現する青スライムの討伐》
《報酬:銀貨5枚/討伐数に応じて追加支給あり》
採取系の依頼と迷ったが、氷魔法を試してみたかった。
選択すると、ステータスウィンドウに「現在進行中の依頼」として登録される。
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街を出ると、草原が広がっていた。
草の背は足首ほど。昼下がりの陽光が揺れ、遠くに他プレイヤーの姿も見える。
青スライムは、ぷるりと跳ねる音とともに視界に現れた。
「……よし」
右手をかざす。
詠唱とともに、淡い青の魔法陣が展開される。
空気が急速に冷たくなり、魔力が一点に収束する。
「《アイスランス》」
鋭い氷の槍が、風を裂いて飛んだ――が。
スライムの跳ねる動きにかすめただけで、地面に突き刺さる。
辺りの草が、冷気で一瞬にして凍りついた。
「……外れた」
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もう一度、タイミングを計る。
魔法のクールタイム。魔力消費。詠唱。
すべてが、現実のようにリアルだった。
魔法を放つたびに、ほんのわずかに手が冷える。
何より、当てるのが難しい。
「《アイスランス》……!」
今度は命中。スライムが凍りつき、ひび割れて崩れた。
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依頼の目標数に達するまで、十数分かかった。
当たらない。動かれる。想像以上に疲れる。
けれど、確かに「魔法を使っている感覚」があった。
魔法の余波で凍った草が、足元でシャリッと音を立てる。
「冷たい魔法。でも……合ってる、かもな」
氷の感触が、静かに胸の奥に残った。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回はシアンの“初依頼”と“氷魔法の初実戦”を描きました。
氷魔法は難しくても、彼にとっては確かな感触があるようです。
次回、思いがけない“気配”との出会いが、物語を静かに動かしていきます。お楽しみに!