第52話 雪に備えて
イベントに向けた準備回となっています!
イベントまで、残り四日。
朝、ログインしたシアンの視界に、大きな告知ウィンドウが表示された。
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《大型イベント:凍てつく森の来訪者》
開催日時:今週末 20時より開始
推奨レベル:15〜20
推奨装備:防寒具・冷気耐性アイテム
舞台は“白銀に包まれた森”。
氷と雪に閉ざされたエリアでは、気温による行動制限が発生します。
防寒対策のない場合、スタミナ消費増加・凍結リスクなどが加わります。
※詳細は特設ページをご確認ください。
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「……マジで雪国じゃん」
ロアスがぴょこんと足元に現れる。寝ぼけ眼の彼は、いつものようにシアンの足に身体をすり寄せてきた。
「おはよ、ロアス。……見て、これ。雪の森だってさ」
ロアスはちらりと画面を覗き込むように視線を向けると、ピクッと耳を動かした。
寒いのは苦手らしい。そういえば前に、冷気魔法の訓練中に凍えていたっけ。
「じゃあ今日は、イベントに向けての準備、かな」
シアンはギルドの掲示板を一瞥し、軽いクエストも後回しにして街の中央へと向かった。
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通りを歩けば、あちこちでイベントの話題が飛び交っていた。
「雪が積もるってことは、スキーとかできんのかな」「いや、焚き火スキルがいるんじゃ?」
なんて雑談も。NPCの商人たちも「防寒具入荷しました!」と声を上げている。
「ローブ探しとこうか。軽装備のままだとキツいかも」
装備屋の奥にある布製品のコーナーへと進み、目を留めたのは淡い灰色のローブ。
裏地は起毛素材で、デザインはシンプルながら裾に氷の文様が織り込まれている。
「これ、悪くないな……ロアス、こっちどう?」
ちらりと見せると、ロアスがくんくんと鼻を動かしながら、そっと頬ずりする。気に入ったらしい。
NPCの店主が「そちらは防寒機能付き、冷気耐性がほんの少しありますよ」と説明してくれた。
「じゃあ、それもらいます。あと、マントってありますか?」
素材や防御力も見ながら、イベント特需でやや高くなっている価格に少し唸るも、
シアンは悩んだ末、ロアス用の軽装マントと、火打石のセットも一緒に購入した。
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宿に戻ると、新調したローブを羽織り、鏡の前に立つ。
ベージュ寄りのグレージュ色に、袖と裾のアクセントがよく映えていた。
思ったより似合っている。軽装で動きやすさも損なわず、寒冷地でも問題なさそうだ。
ロアスも小さなマントを着けており、なぜか誇らしげに尻尾を振っている。
「……うん、準備は順調。あとはアイテムの整理と、いくつかポーションの補充かな」
冷気対策用のホットドリンク、マナ回復ポーション、凍結解除用の薬草アイテムなど──
ギルドストールで手に入るものを一通りそろえておく。
何度もインベントリを開き、持ち物と装備を見直す。
視界の端には、日付のカウントダウン。イベント開始まで、あと四日。
雪の森の向こうで、何が待っているのか。
わくわくと、不安とが、胸の奥で混じり合っていた。
いよいよイベント目前!舞台は雪の森
装備も整えて、次回はいよいよ直前の調整へ!
【次回更新:明日18時】お楽しみに




