第51話 あと一撃、その先へ
今回も体術・魔法・連携が光る戦闘回です。
──風が止む。
草原に沈みかける夕陽が、薄く伸びた影を照らしていた。
目の前に現れたのは、通常よりも一回り大きなリザード型モンスター。
その鱗は土色にくすみ、赤く光る眼が、狙いを定めていた。
「ロアス、いけるか」
小さく頷いたロアスが前に出る。氷の靄をまとって滑るように駆け、爪に冷気をまとわせて振り下ろす。
しかし、相手の皮膚は分厚い。爪は滑り、ダメージは浅い。
すぐに間合いを詰めたシアンが、包丁を逆手に握る。
刃先が光を反射し、リザードの脚へと鋭く飛び込んだ。
――チンッ!
金属音と共に、硬質な鱗を裂いた感触が手に返る。
シアンはすぐさま反転し、地面すれすれに身を低くして背後へ回り込んだ。
「《フロスト・バインド》!」
詠唱と共に放たれた氷魔法が、敵の足元を凍てつかせる。動きが鈍ったところを、ロアスが跳ね上がり、蹴りを打ち込んだ。
ガンッ!
──硬い。だが効いた。
「……っ、こいつタフだな」
リザードが咆哮を上げて突進してくる。シアンは身をひねってかわし、地面を転がりながら着地。
視界の端で、ロアスがその背後を取っていた。
「今だ、ロアス!」
シアンが叫ぶと同時に、ロアスが跳躍。
氷の爪が、凍てついた風と共に敵の首筋に突き刺さる。
その一瞬を見逃さず、シアンが包丁を脇腹へ滑り込ませた。
──ズバッ。
刹那の沈黙の後、モンスターが崩れ落ちた。
「……っは」
シアンは大きく息を吐き、血のついた包丁を軽く振って拭う。
その手元に、システム通知が表示された。
⸻
【レベル15に上昇しました】
【ステータスポイントを獲得しました】
【スキルポイントを獲得しました】
⸻
目標にしていたレベル15。
これで、イベント参加条件を満たした。
「ロアス」
名を呼べば、ロアスもこくりと頷いた。
目を細めて、満足そうに笑っているように見える。
「よくやったな。ほんと、お前がいてくれて助かってる」
その言葉に、ロアスはふわりと尻尾を揺らした。
夕陽が差す中、影を並べて立つ二人の姿に、どこか穏やかな空気が漂っていた。
イベントまで、あと五日。
その準備と、この小さな相棒と過ごす日々を、シアンはほんの少しだけ楽しみに思っていた。
目標レベルクリア、そしてイベントまであと5日。
ここから準備と展開が加速していきます。
更新は【毎日18時】です、ぜひお楽しみに!




