第5話 ギルド受付:登録と、選ばなかった場所
シアンは冒険者ギルドと生産ギルドに登録します。
氷魔法、料理、そしてテイマーという構成の中で、“今できること”を選んでいきます。
ギルドの扉を開けると、内装は落ち着いた木の空間だった。
カウンターの奥には、感情のない笑みを浮かべたNPCと、にこやかな女性プレイヤーが並んでいる。
「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ」
NPCの淡々とした声が響く。
「初登録の方ですね? よければ、私が案内しますよー」
プレイヤーの女性は、受付補助としてここで活動しているらしい。
「……お願いします」
短く答えて、カウンター前に立つ。
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登録の手続きは、職業とスキル構成に基づいて自動処理される形式だった。
『現在の登録内容を確認します』
•メイン職:氷魔法使い(クリオマンサー)
•サブ職1:料理師
•サブ職2:テイマー
NPCが説明を続ける。
「氷魔法使いは、主に制圧や補助に特化した魔法職となります。
パーティ支援に適性がありますが、ソロプレイの場合は採取、偵察向きです」
ソロ向け、という言葉に少しだけ肩の力が抜けた。
「料理師の登録によって、生産ギルドにも同時に申請が可能です。
施設の一部利用、素材の保管枠、初期支援品などが提供されます」
「生産ギルドはギルド街の西側にあります。こっちのギルドと併用もできますから、安心してくださいね」
プレイヤー受付がそう補足する。
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「テイマーについては……あ、ごめんなさい。
当街には、テイマー専用のギルドが存在しないんです」
「テイマー関連の支援は、大都市の方で行われていると記録されています」
NPCが機械的にそう告げる。
「……そうですか」
予想していたことだった。
でも、少しだけ胸の奥がざらついた。
――選べる場所があって、選んだはずなのに。
それでも、「選ばなかった場所」があるというだけで、何かが引っかかることがある。
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登録処理が終わると、小さなカードが二枚渡された。
一枚は《冒険者登録証》
もう一枚は《生産職キッチン利用許可証》
「これで、今日から正式にギルド登録完了です!」
プレイヤー受付がにこっと笑って言った。
「依頼の受付はこの奥の掲示板から選べます。初心者向けの印がついてるので、わかりやすいと思いますよ」
軽く頭を下げて、カウンターを離れる。
登録証をポケットに入れて、ふと思う。
「……できることから、でいい」
静かに、次の行動を考え始めた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回は冒険者ギルドと生産ギルドへの登録、そして“テイマーはまだ始まらない”という選択を描きました。
次回は依頼掲示板を確認し、最初の行動へと移ります。引き続き、よろしくお願いします!