第48話 鑑定で見えてくる世界
見えるようになると、気になるものがどんどん増えていく。
そんなスキル実践編です。
「……なんでも、鑑定してみたくなるな」
朝の通りを歩きながら、シアンは軽く笑った。
ステータスウィンドウのスキル欄には、昨日取得した【鑑定:Lv1】の表示が光っている。
せっかく手に入れたのだ、まずは使ってみよう。そう思っていた。
街の看板、露店の野菜、露天に置かれたアクセサリー。
スキルを起動し、対象を注視する。
《アイテム名:香辛ニンジン》
《品質:C 保存状態:良好 効果:料理に使用すると辛味が加わる》
《アイテム名:銀のペンダント(模造)》
《品質:D 素材:合金 効果:なし》
「へぇ、見た目と違って全然高級じゃないのもあるんだな……」
驚きと納得が交互に押し寄せる。
街は情報であふれていたのに、今まで見えていなかったのだと実感する。
⸻
視界の隅に、気になる建物が入る。
古びた木製の看板には「鍛冶工房・レンブラント」とだけ彫られていた。
無骨なドアを開けると、雑然とした空気が肌を打つ。
店内には武器、防具、工具などがずらりと並んでいる。
その中で、ひときわ雑に、無造作に置かれた一角に目を奪われた。
「解体用のナイフか……全部同じ値段?」
値札には【100G】とある。だが、どれも古びた金属製で見た目はぱっとしない。
──だからこそ、試してみる価値がある。
「《鑑定》」
シアンはスキルを起動し、一つひとつのナイフに視線を走らせた。
《ナイフA:解体用ナイフ 品質:C 効果:解体成功率+3%》
《ナイフB:解体用ナイフ 品質:B 効果:解体成功率+6%/部位別取得率アップ小》
《ナイフC:解体用ナイフ 品質:D 効果:なし》
「……これだな」
Bランクのナイフは、見た目は他と変わらない。
けれど中身は、確かに一線を画していた。
「これ、もらうよ」
工房の店主は無言で頷き、代金を受け取った。
どうやら、あの雑然とした展示も“見る目”を持つ者の試練だったのかもしれない。
⸻
工房を出たシアンは、新しいナイフを光にかざした。
「物にも“ランク”があるって、こういうことか」
目に見えない違いが、世界を分ける。
【鑑定】スキルは、戦いだけでなく生活全般を変えてくれる力になる。
そう実感した一日だった。
ロアスは隣で静かに歩いていたが、時折ちらちらとナイフを見ている。
その視線に気づき、シアンはふっと笑う。
「今度、これで旨い肉を切ってやるよ」
「……楽しみ」
ぼそりと返したロアスの言葉が、やけに嬉しかった。
「目利き」ができるようになるって、こんなにも心強いんだなって思える回でした。
次回も18時更新です。よろしくお願いします!




