第47話 素材を知る目が欲しくなる
「わからない」はいつも、チャンスの入口。
今回はそんなお話です。
「あの野草、もう一度、探してみるか」
翌朝、シアンは残ったハーブの切れ端を手にして呟いた。
料理としては成功、バフもついた。
だが──あれが“本当に安全だったか”は、結局わからなかった。
「直感だけじゃ、限界があるな……」
ロアスはテーブルの上で丸まって、ゆっくりと尻尾を振っている。
昨夜の料理に満足していた様子だったが、シアンの中では何かが引っかかっていた。
素材の正体を、もっと早く、正確に知る方法。
調理する前に、肉や野草の性質を把握できれば──失敗も危険も減らせる。
「……やっぱり、鑑定スキルが必要だ」
今まで“戦いの技術”や“調理の手際”にばかり意識が向いていた。
けれどこの世界では、それだけじゃ足りない。
“素材そのもの”を知る目が、確実に必要だった。
⸻
ステータスウィンドウを開き、スキルツリーを呼び出す。
最近の戦闘と料理で獲得したスキルポイントは、2ポイント。
鑑定スキルには、1ポイント必要と表示されていた。
「よし。これを取ってみるか」
指先で該当スキルを選択し、確認ボタンを押す。
《スキル【鑑定:Lv1】を取得しました》
《素材・装備・アイテムなどの基本情報が確認可能になります》
「これで、料理も冒険ももっと楽になる……はず」
少しだけ胸が高鳴る。
これまで無意識に見逃していた素材の“背景”を、これからは目で確かめられる。
たとえ草一本でも、それが毒か薬か、はたまた未知の食材か、スキルで見極められるのだ。
「なぁ、ロアス。次に何か見つけたら、ちゃんと確認してみような」
「……うん」
ロアスは短く返事をし、しっぽをぱたぱたと揺らした。
この小さな変化が、後にシアンのクラフトスキルや探索に大きく影響していく。
だが、今の彼はそれをまだ知らない。
「見る」から「知る」へ。
シアンの成長のひとつが加わりました。
次回も18時に投稿予定です。
よかったら覗いてくださいね!




