表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/101

第43話 届け物と、じっくり煮込むスープの話

穏やかな午後に、できることをひとつずつ。

そんな時間が、後に大きな変化をもたらすのかもしれない。


届け物は、小さな包みに収まったギルド印入りのポット。

街外れにある雑貨店までは、静かな石畳の道が続く。


ぽつぽつと並ぶ商店の中に、目的の雑貨店を見つける。

扉を開けると、優しげな女性NPCが笑顔で出迎えた。


「これをお届けに来ました」

「まぁ、ご丁寧に。ありがとうございます。最近は冒険者さんも丁寧ね」


小包を渡すと、そのままスムーズにクエストが完了した。


《クエスト「ギルド指定品の配達」達成》

《達成報酬:野菜スープレシピ》


ギルドに戻り、報告を済ませると、受付が封筒を手渡してくれた。

封筒を開くと、見慣れたスープ皿のイラストと、手書き風のレシピが添えられていた。


「これ……作ってみるか」


届け物は無事終えた。せっかくレシピも手に入れたのだ、今晩の夕食にぴったりだろう。


途中で出会った露店の匂いに、ロアスが鼻をひくつかせた。


「……野菜、買って帰ろうか」


届け物を終えたシアンは、ついでに露店の並ぶ通りへと足を向けた。

新鮮な野菜が丁寧に積まれた木箱。どれも料理好きの心をくすぐる品ばかりだ。


「兄ちゃん、料理する人かい?」

店主の陽気なNPCが声をかけてくる。


「まあ、少しだけ」


「へえ、なら覚えておくといいよ。料理レベルが上がると、“料理バフ”ってのが付くんだ。体力回復が上がったり、攻撃力アップしたりな」


「バフ……へぇ、便利なんだな」


「ただし、一定レベルに達しないと発動はしないぜ。焦らず腕を磨くこった」


にかっと笑う店主から、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、セロリを購入。

ついでにスパイスも少量手に入れた。


* * *


ギルドの共有キッチン。

火加減を調整しながら、煮込む時間も楽しんでいると――背後から「くぅん」と鼻を鳴らす声。


「待ってろ。味見くらいはさせてやるから」


たっぷりの野菜がとろけるように煮えたら、最後に塩で整える。

ギルド報酬で手に入れたレシピは、意外と奥深かった。


《スキル【料理】がレベル3になりました》

《新機能:料理バフの効果が解放されました(発動条件未達)》


「……まだバフは発動しないのか。地道にいくしかないな」


できたてのスープを、ロアスに小皿で分けると、嬉しそうにしっぽを振る。

シアンも木のスプーンで一口。


「……あったかい」


心までほっと温まる味だった。


どんな強さも、こんな穏やかな一歩から。

次はどんな料理に挑戦するのでしょう?

※毎日18時更新中。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ