第40話 準備の時間も、物語の一部
強くなるには、ただ戦うだけじゃない。
“備え”こそが、自分の力を最大限に引き出す鍵になる。
「……そろそろ装備を見直すか」
レベル10になったことで、装備できる防具も増えてきた。
とはいえ、重装備で動きを鈍らせる気はない。
選んだのは、淡いグレーのローブ。
裾には氷結模様があしらわれ、動くたびに光を反射する。
「うん。動きやすい。これでいこう」
包丁も、新しいものに持ち替える。
ギルドの鍛冶職NPCに素材を持ち込んで強化してもらった“刃渡り短めの一本”。
魔力伝導率が高く、氷魔法との相性も良いらしい。
「次は……回復アイテムか」
薬草系の回復ポーション、マナ回復用のポーションを5本ずつ。
これだけあれば初級ボスでも戦いきれるはず。
「荷物、結構多くなったな……」
そこで視界に飛び込んできたのは、魔具屋の店頭に掲げられた文字。
【空間拡張アイテム:マジックバッグ(初心者向け)】
「これだな」
サイズは普通のリュック程度だが、中は10倍近くの容量がある。
しかもアイテムごとに整理されるため、戦闘中の取り出しもスムーズにできるらしい。
価格はやや高めだったが、迷わず購入した。
「これで完璧……かな?」
ロアスは新しいバッグを興味深そうに覗き込んでいる。
パンの匂いが残っているのか、鼻先をバッグに押し付けていた。
「パンは入ってないぞ」
そう言いながら、シアンはベンチに腰を下ろす。
遠くには、“始まりの草原”の丘。
その奥に、ボスが待つエリアが広がっている。
「ロアス、明日、挑もう」
しっぽを揺らして頷くような動きをしたロアス。
その姿に、少しだけ気が引き締まる。
“やれるだけやってみよう”
準備は整いました。
あとは、挑むだけ――
※本作は毎日18時に更新中。次回もぜひお楽しみに!




