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第37話 包丁と氷魔法、その先に

元社畜の青年が、包丁を握って“戦う”と決めたとき。

静かだった日常が、確かにひとつ前へ動き始める。

「やっぱり、これが一番しっくりくるな」


街外れの訓練用フィールド。

シアンは腰に装着した調理用の包丁を引き抜くと、片手で構えを取った。


氷魔法と、包丁による近接戦。

見ようによってはアンバランスにも映る戦い方だが、シアンにとっては“実に理にかなっている”方法だった。


攻撃範囲は狭い。だがその分、無駄が少ない。

氷魔法で足止めし、包丁で一気に距離を詰めて切り込む。

硬直やスロー効果を活かせば、接近戦でも十分に通用する。

魔力の消費を抑えつつ、確実にダメージを与えられる構成だ。


(ただ、動きの速い相手は……やっぱり厄介だな)


先ほど受けた討伐クエストでは、素早いウルフ系のモンスターに翻弄された。

ロアスと連携して対処はできたが、反応が一歩遅れれば致命的になりかねない。


「……もう少し、身体で捌けるようにならないと」


そう考えたシアンは、新たなスキルを検索する。

狙いは《体術》。

格闘家系の職業では基本となるスキル群で、近接職との相性が良い。


(接近戦で戦う以上、回避や捌きも必要になる)


包丁さばきは、いまやモンスターとの戦闘に応用されていた。

ならば次は、料理では使わなかった“動き”の部分を鍛えよう。


「ロアス。しばらく、反応速度と連携強化に集中するぞ」


小さく頷いたロアスは、その場で軽く跳ね、前足で地面を蹴った。

この幻獣もまた、シアンとともに戦いの精度を高めていこうとしている。


(凍てつく森……推定レベル15の複合イベント)


今の自分では届かない場所。

でも、だからこそ向かいたい場所。


調理場で過ごしていた頃にはなかった「熱」が、シアンの中に宿っている。

あの日、社畜だった自分を辞めた理由。

もう一度、“生きる意味”を探すために選んだこの世界。


戦う理由は、まだ漠然としている。

だけど少なくとも今は──この戦い方が、自分らしいと思える。


“生活寄り”だった戦いが、“確信のある構築”に変わっていく。

シアンの包丁戦、氷魔法、そして体術。

一歩ずつ、確実に戦える姿へ。


本作は毎日18時更新中!

次は、新たなスキル取得の場面かもしれません。お楽しみに!

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