第36話 告知と、凍てつく森の予兆
届いたのは、たった一枚の画像と、短い告知。
けれどそれは、“この世界”が大きく動き始める合図だった。
ログインした直後、ステータスウィンドゥの端に、見慣れない通知が浮かんでいた。
《特別イベント告知:2週間後より“凍てつく森”イベントを実装予定》
──推定推奨レベル:15
──参加条件:1次職のスキルレベル合計10以上
──内容:生活・戦闘複合イベント(探索・討伐・収集など)
──場所:北エリア“凍てつく森”
──ヒント:※添付画像をご確認ください
添付ファイルを開くと、薄青い雪に包まれた森の一角が映し出される。
氷晶が煌めき、静けさの中に何かを秘めた風景――それはどこか、ロアスと出会ったあの夜に似ていた。
「……行くしか、ないか」
呟きながら、シアンは自身のステータスを確認する。
職業:氷魔法使い/テイマー/料理人
レベル:9
魔力操作:Lv2/料理:Lv2/幻獣知識:Lv1/氷魔法:Lv3/契約:氷属性
現在の戦闘力では、おそらく厳しい。
それでも、凍てつく森という名称には、強く惹かれるものがあった。
「ロアス」
そばで静かに佇んでいた幻獣が、ぴくりと耳を揺らす。
「準備を始めよう。……まずは、レベルを上げる」
返事はない。けれどロアスの瞳が、少しだけ輝いた気がした。
シアンはギルドに向かいながら、次に受けるクエストを選び始める。
これまでのように、料理や生活スキルだけでなく、戦闘を意識した依頼。
効率的な討伐ルート。魔力消費の最適化。幻獣との連携強化。
「二週間か」
短くないが、長くもない。
イベントの舞台《凍てつく森》の、ひんやりとした空気が、画面越しに伝わってくるような気がした。
今回は「物語が大きく動き出す前の静けさ」を意識した一話でした。
凍てつく森、複合イベント、推奨レベル15――
シアンとロアスの旅路が、次なるステージに入っていきます。
本作は毎日18時更新中!
これから訪れる“冬の森”の景色、どうぞお楽しみに。




