第3話 街とチュートリアル:包丁は武器にもなるらしい
シアンのチュートリアル回です。
スキル構成や初期装備、そして街の雰囲気が見えてきます。
ログイン直後、画面が一度白く染まり、目の前に光のパネルが浮かび上がった。
『チュートリアルを開始します。
あなたの職業構成に基づき、スキル・装備を初期設定します』
女性の声。抑揚のない、淡々とした音。
案内役のNPCも表示されたが、表情はほとんど動かない。
……その無機質さが、むしろ心地よかった。
『現在のスキル構成を表示します』
次の瞬間、目の前にステータスウィンドウが展開された。
⸻
【スキル構成】
● メインスキル:氷魔法 Lv1
- 技:
・フロストミスト(視界と命中率を下げる霧)
・クリスタルショット(中距離攻撃+スロウ)
● サブスキル:料理 Lv1
- 技:
・一皿のぬくもり(食事によるHP回復バフ)
・簡易調理(材料不要の即席回復食)
● サブスキル:テイム Lv1
- 技:
・幻獣契約(契約条件未達・未使用)
・命令:回避/待機(幻獣指示設定・未使用)
● 共通スキル:魔力操作 Lv1
- 技:
・詠静:詠唱中の魔力ブレを抑え、命中精度と詠唱速度を微強化
● 武器装備:調理用包丁(短剣扱い)
- 技:
・包丁の心得(調理スキルと連動した戦闘装備)
・氷打ち刻み(短剣による3連撃+冷気スリップ効果)
⸻
「……本当に、戦う気あるのかって構成だな」
口に出して、少しだけ笑う。
だが、取り消す気はなかった。
『初期装備を配布します』
チュートリアルNPCから手渡されたのは、簡素な装備一式。
調理師スキルがあるためか、《調理用小包》という箱も追加されていた。
その中に入っていたのは――包丁。
切れ味は鋭くないが、しっかりと握れる重みがある。
「武器としてじゃなくて、いつも触ってた道具だな」
装備欄に登録すると、短剣扱いとして認識され、スキルも有効化された。
包丁の名前は《鉄刃包丁》と表示されていた。
⸻
チュートリアルを終えると、画面が切り替わり――静かな広場へ転送された。
中世ヨーロッパ風の街並み。
石畳の道、木製の看板、鐘楼塔の影が広場を斜めに横切っている。
遠くには市場らしきざわめきがあり、近くでは新人らしきプレイヤーが数人うろうろしていた。
その喧騒を避けるように、俺は広場の隅のベンチに腰を下ろした。
包丁の柄にそっと手を添える。
懐かしい重さだった。
上を見上げると、空には淡い雲。
風の音だけが、心を通り過ぎていく。
「……騒がしくない世界って、いいな」
小さくつぶやいた声は、誰にも届かない。
けれど、初めて少しだけ“この世界にいてもいいかも”と思えた瞬間だった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
スキルや技名を整理して、包丁=武器としての描写も入れました。
次回は村での最初の行動や、フィールドでの出来事を描いていく予定です。
またぜひ、遊びに来てください!