第20話 風の丘へ、共鳴の始まり
図書館で得た知識は、まだ小さな一歩。
けれど、世界はもう“つながり”を求め始めていた。
結晶が微かに震える。
それは、名もなき幻獣からの――最初の“囁き”。
依頼掲示板の前で足を止める。
【依頼No.022】
風の丘に出現する野生獣の討伐依頼
推奨人数:1〜3名/難度:★☆☆/報酬:銀貨10枚+毛皮×1
(昨日のラビットよりは少し手強そうか……)
悩むでもなく、シアンは「受注」ボタンを押した。
ギルドカウンターでは、昨日より柔らかく微笑む受付NPCが
「お気をつけて」と、さりげない声をかけてきた。
その些細な変化が、アップデート後の“息吹”を感じさせた。
⸻
風の丘は、街から北東に広がるなだらかな草原だった。
強い風が髪を揺らし、遠くに野生のラビットの影が見える。
(……行くか)
スキルウィンドウを開き、《氷魔法Lv1》の【フロストニードル】を展開。
けれど、その直後――
ポーチの中で、結晶が淡く光った。
「……?」
取り出して見ると、氷の結晶が震えていた。
まるで、遠くから何かを伝えようとしているように。
「ロアス……?」
名前はまだ呼べない。契約もしていない。
それでも、あの晩の温もりを思い出すと、自然にそう呼んでいた。
その瞬間――
【スキル派生:共鳴感応Lv1】
あなたは“幻獣の感情”を微かに読み取ることができます
ウィンドウが現れると同時に、
視界の端に、風に舞う氷の欠片のような光が見えた。
それはラビットの背後で、淡く瞬き――やがて消えた。
「見ていてくれてるのか……?」
呟きながら、シアンは前に踏み出す。
氷魔法の発動に集中しながらも、胸の奥には微かな期待があった。
“また、会えるかもしれない”
ここで【共鳴感応】という派生スキルを導入。
ロアスとの絆が「感応」→「接触」→「契約」へ進んでいく伏線にもなります。




