第2話 スキル選択:氷魔法と、最後に加えたもの
シアンのキャラクター作成とスキル選択の回です。
迷いながらも“好きなもの”を選んだ、静かな始まりをどうぞ。
ログインが完了すると、光に包まれた空間へ転送された。
視界には、ゲーム内アバターの初期設定画面が表示されている。
性別、髪色、目の色、体型――
どれも現実とは違う姿にできるけれど、俺はあえて現実に近い設定を選んだ。
目は少しだけ淡い氷色に変えて、それ以外はそのまま。
「名前……」
ゲーム内の名前――プレイヤーネームは、シアンにした。
好きな色だった。
落ち着いていて、静かで、でもほんの少しだけ温度を感じる色。
キャラクターが完成すると、次は職業の選択画面が浮かび上がる。
中心に配置されたのは、剣士、魔導士、アーチャーといった王道職。
その外側には、調理師や薬師、鍛冶師といったクラフト職が並んでいた。
その中から、まず選んだのは――調理師。
現実でも、料理はずっとしていた。
仕事で疲れていた頃も、帰ってから包丁を握る時間だけは落ち着けた。
“切ること”に集中していると、頭の中の雑音が消える気がした。
次に、メインの戦闘職を選ぶ画面が開く。
火、風、雷、氷――
どれも攻撃魔法職だったが、迷わず氷魔法使いを選んだ。
理由は一つ。雪が好きだったからだ。
現実でも、静かに降る雪の音を聞いている時間が一番落ち着いた。
冷たいのに、心が静まる感覚があって。
炎のように燃え上がらず、雷のように激しくもない。
ただ、静かにそこに在る魔法。
……俺には、それで充分だった。
そして最後に表示されたのが、もう一枠だけ選べる“副職”欄。
そこに小さく並んでいたのが――テイマー職。
人気はない。
育てるのが大変、連れている幻獣も気まぐれで言うことを聞かないと評判だった。
効率を求めるなら、選ばない方がいい。
でも、なぜか視線がそこに止まって、動かなかった。
あの紹介ページに載っていた、一匹の幻獣。
ふわふわの体で、誰にも懐かず、ただ一人のプレイヤーのそばにいた存在。
あれが、妙に印象に残っていた。
「……どうせなら、やってみるか」
そんな理由で、テイマー職のアイコンをタップした。
どれも強いわけじゃない。
火力も、回復も、支援も中途半端だ。
だけど――どれも、今の自分には“しっくりきた”。
そんな気がした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回はキャラメイクとスキル選択のみですが、シアンの静かな気持ちを大切に描きました。
次回は、初期村でのスタートやシステムとの対面を描いていく予定です。
またぜひ読みに来ていただけたら嬉しいです!