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第17話 名前を知らない、君のそばで(ロアス視点)

言葉を持たないはずの幻獣が、彼の声に反応した。

初めて“食事”を分け合い、温もりを感じた。

シアンという人間に、ロアスは確かに“惹かれた”。


――氷の気配。


それに導かれるように、ロアスは“外”へ出た。

新たな世界。名もない大地。かつていた場所とはまったく違う。

けれど、彼の中で眠っていた何かが、ひどく騒いだ。


そして出会ったのが、“あの人間”だった。


彼――シアンは、氷を扱う。

だがその氷はただ冷たいだけじゃなかった。

どこか、雪のような……降り積もって、やわらかく、そして静かに包み込む冷たさだった。


それが心地よかった。


近づくと、彼は料理をしていた。

香ばしい匂い。あたたかな湯気。

それを、誰に分け与えるでもなく、自分のためだけに静かに作っていた。


それが――どうしようもなく、惹かれた。


孤独を知っている者の味。

それは、自分が“欲しかったもの”だったのかもしれない。


彼の横に座り、差し出された器を受け取った。

それは契約でも命令でもない。

ただ、食事を一緒にする、という――温かい行為。


だからこそ、

朝になっても彼のそばに“居続けて”はいけないと、思った。


幻獣は人にとって“特別な存在”だ。

だからこそ、彼が望まなければ、側に居てはいけない。


だから、結晶を置いた。


――君が、また僕を思い出してくれるなら。

――君が、また僕を必要としてくれるなら。


僕はまた、君のそばに現れる。


ロアス視点からの“理由”と“想い”を描きました。

静かな優しさと、孤独を知っている者同士の、心の引き合い――そこが二人の“絆”の芯になります。

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