第14話 報酬と、静かな夕餉
ホーンウルフ討伐を終えて、街へ戻ったシアン。
ギルドで報酬を受け取り、いつものように夕飯の準備をする。
だが、その夜は――少しだけ、違っていた。
ギルドでの報告はスムーズに終わった。
毛皮の等級もそこそこ。シアンの戦いぶりに、受付は驚いた表情を浮かべていた。
「氷魔法、ですか……珍しいですけど、ちゃんと結果を出せる人は、やっぱり強いんですね」
簡素な褒め言葉を受け流し、シアンは食材を抱えて街の外れに戻る。
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夜。
テントの中で火を起こし、保存していたスープを温め直す。
小麦とチーズを足して、ミルクスープ風に仕上げていく。
スキル《料理》がじんわりと発動し、香りが広がった。
そのときだった。
――視線。
確かな“何か”が、自分を見ている感覚。
だが、振り返っても誰もいない。
気のせいか。そう思って食器を手に取った――その時だった。
「…………おいしそう」
テントの布越しに、低く静かな声が届く。
振り返ると、そこにいた。
白銀の体毛、澄んだ蒼の瞳。
あの草原で出会った白い幻獣――彼が、すぐそばにいた。
「……君、また……」
驚きよりも、どこか懐かしさのようなものが先に来る。
幻ではなかった。そこに“いる”と確信できる温もりと気配。
シアンは躊躇いがちに、スープをもう一皿用意した。
「……いるなら、一緒に、どう?」
幻獣は少しだけ首をかしげ、ふわりとシアンの隣に座った。
器を覗き込むと、小さく鼻を鳴らし、そっと舌をつける。
「……あったかい」
その一言に、シアンの手がわずかに震えた。
幻獣は、味を知っている。
そして、言葉を話した。
静かな夕餉の中、氷の結晶が、ひとつだけ舞い落ちた。
ついに、姿を現しました!
まだ契約は結ばれていませんが、「食事を共にする」という第一歩を踏み出した回です。
次回は2人のやり取りを描きながら、距離感を少しずつ近づけていきましょう。




