第13話 ホーンウルフと白き影
夜の“はじまりの草原”で、ついに依頼対象・ホーンウルフが姿を現す。
動きの速い獣型モンスターに、シアンの氷魔法は通用するのか――
そして、戦いの最中に“彼”が現れる。
風が変わった。
低い唸りと共に、茂みの奥から現れたのは――
「……ホーンウルフ」
背丈は大型犬ほど。
灰色の体毛に、片方だけ光る赤い目。
牙をむいてこちらを睨みつける様子は、明らかに敵意を持っている。
シアンは呼吸を整え、両手を前に出す。
「《氷牙》」
足元から氷が噴き出し、地面を裂く。
だがホーンウルフはその軌道を見切り、飛びかかってきた。
「っ……!」
避けきれない。瞬間、包丁を構え直し、受け流すように切り上げる。
魔法だけでは、対応できない速度。
それでも、魔力を練り直し、再度唱える。
「《氷結弾》!」
氷の弾丸がホーンウルフの足をかすめ、動きが鈍る。
そこを狙って再び包丁で牽制。魔法と物理のコンビネーション。
なんとか一撃、毛皮を裂いた。
【ホーンウルフ討伐完了 毛皮×1獲得】
倒した瞬間、どこからか微かな気配がした。
草原の先、夜の霧にまぎれるように――白い影が、こちらを見ている。
「あの……ときと、同じ……」
シアンは思わず近づこうとした。
が、その瞬間、影はふっと姿を消した。
代わりに、足元に小さな氷の結晶がひとつ、落ちていた。
それは誰かの“感情”のように、静かに揺れていた。
ついにホーンウルフとの戦闘、そして”初接触”が描かれました。
まだ契約は結ばれず、距離はあるものの、確実に2人(1人と1体)は引き寄せられています。
次回は街に戻って報告&報酬、そして“料理”の時間へ――!




