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第100話 新しい装備と噂

「今日は市場で食材を買ってから帰ろうか」

シアンがそう言うと、リントは新しい防護服を軽くつまんで「これ着て行くの、なんか恥ずかしい」と耳を伏せた。

「似合ってるんだから堂々としてろ」ロアスが淡々と言い、シアンも頷く。


市場に入ると、さっそく注目が集まった。露店の女将が目を丸くし、にっこり笑う。

「あらまぁ! こんな可愛い装備を着て……お坊ちゃん、似合ってるわねぇ。今日は特別にちょっとおまけしてあげる!」

「えっ……ほんと?」リントが目を輝かせると、女将はパンを一つ余分に袋に入れた。

「ありがとう……!」リントがしっぽを揺らしながらお礼を言うと、周囲の人も笑顔になった。


だが、市場を歩いていると別の視線も感じた。数人のプレイヤーが小声で話し合っている。

「ねぇ、あれ……」

「例の幼狼じゃないか?」

「防護服まで仕立ててもらって……どんなプレイヤーなんだろう」

シアンは聞こえないふりをしたが、胸の奥に小さな緊張が走った。




マイホームに戻ると、まずは装備の効果確認だ。

「じゃあ、少し試してみよう」シアンが合図し、リントが頷く。

氷魔法の冷気をまとわせた攻撃を軽く当ててみると、防護服が薄い光を帯びて衝撃を和らげた。

「すごい……痛くない!」リントが目を丸くする。

「俊敏性も試そうか」ロアスが言い、リントと軽く追いかけっこを始めた。リントは服が邪魔にならず、むしろ軽やかに動けていた。


「毒耐性もあるんだっけ?」シアンが首をかしげると、装備のステータスが表示された。

《毒耐性・小》――状態異常の進行を遅らせる効果が確認できた。

「これなら、あの湿地の黒百合の時も安心だったな」

「ねぇシアン! これでぼく、もっと役に立てる?」リントが不安げに尋ねる。

「もちろんだ。これで心置きなく一緒に戦える」シアンは笑い、頭を撫でた。リントは照れながらも嬉しそうに尻尾を振った。




その夜、ステータスウィンドウを確認すると、プレイヤー掲示板がざわついていた。


《最近、王都で見かけたんだが、白銀の幼狼を連れてるプレイヤー見た?》

《見た! しかも専用装備っぽいの着てた。あれ絶対オーダーメイドだろ》

《テイマー系? でもあんな可愛いの初めて見たんだけど》

《名前はリントって聞こえた》

《めっちゃ人気出そうじゃね? ていうか、どこのギルド所属なんだろう》

《情報出回るの時間の問題だな。特に職人筋には絶対話題になる》


「……やっぱり、注目されてるな」シアンが小さく息を吐くと、ロアスが静かに言った。

「騒がれても、やることは変わらない」

「そうだよ、シアン。ぼくはシアンと一緒にいたいだけだもん」リントが真剣な目で言う。


「……そうだな」

シアンは笑い、二人を見つめた。どれだけ注目されても、この絆が揺らぐことはない――そう心に刻んだ。

市場でのやり取りから、マイホームでの装備試し、そして掲示板で噂になるまで……リントの存在がますます大きくなってきました。仲間としてもシンボルとしても、彼の役割は広がっていきそうです。

次回も18時更新です。


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