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2話 電話

『――ピロン♪』


 現在時刻よる10時過ぎ。やるべきことを一通り終えてそろそろ寝ようかと考え始めていたころ、テーブルに置いていた携帯から通知が鳴った。

 メッセージアプリ以外の通知は切っているので、必然的に誰かがメッセージを送ってきたことになるが……まぁ俺に連絡してくる奴なんて千波ぐらいだろ。


「こんな時間になんの用だあいつ?また変な動画じゃないだろうな」


 どうせいつものSNSで見つけたくだらない動画の共有だろう。定期的に送ってくるのはいいんだが、たまに対して面白くもないやつを送ってくるんだよな……

 正直見ないで寝てしまってもいいのだが、無視するとあとでぶつくさ言われて面倒なので仕方なく通知を確認する。

 

『夜遅くにすみません。朝木くんのアカウントで合ってますか?』


「あ?千波じゃないな、『N・K』?誰だこれ」


 アプリを開くと千波からの新着メッセージは無く、代わりにあったのは知らないアカウントから贈られた一通のメッセージだけだった。友達登録もされていないアカウントだし、試しにアカウントの詳細を確かめてみても猫の写真があるだけで何も分からなかった。

 まぁ俺の名前を知ってるってことは少なくともスパムアカウントではないのだろうから、返信しても大丈夫だろう……多分。


 『合ってるけど、誰?なんで俺のアカ知ってんだ』


「取り合えずこれでいいか。今のうちに寝る準備を『ピロン♪』返信速ぇな!?」


 『あ、ごめんなさい。夏見です』

 『今日は傘を貸してくれてありがとうございました。ちゃんとお礼したかったので連絡しました』

 『アカウントはクラスのグループから探して登録させてもらいました』

 『それでですね、お借りした傘をお返ししたいのですが、明日は学校がお休みじゃないですか』

 『なのでどこかでお会いできませんか?もちろん朝木くんの予定が開いていればですが……』


「多い多い早い早い!」


 返信を返そうと入力している間に、次から次へと絶え間なく新しいメッセージが送られてくる。読んでいる間に次のメッセージが送られてくるせいで、前のメッセージが上に流れて滅茶苦茶読みにくいうえに情報量が多い。

 どうやら俺が今日傘を貸したことのお礼を言うために俺のアカウントを探して、わざわざメッセージを送ってきたらしい。あれは貸したというか、押し付けたようなものだし気にしないでいいんだけど……


 『別に無くて困るような物じゃないし、休み明けに返してくれたらいいよ』


 

 

 ……既読は付いたものの、今度は暫く待っても返事が返ってこない。もう用件は終わりということでいいんだろうか。スタンプでも送ってくれると分かりやすいんだが……まぁ、そこは人によるか。千波とか普通に話の途中で返信してこなくなるし、あいつに比べたら用件自体は伝わってるからマシか。


 『――――♪――――♪』


「は?今度は電話?」


 返信が返ってこなくなったかと思いきや、今度は電話がかかって来た。え……どうしよう、出るの凄い怖いんだけど。電話かけてくる理由なんて今なかったよな?いや、もしかしたら押し間違えただけかもしれない。待ってたらすぐに切れ――


 『――――♪――――♪』


 ――なかった。押し間違えで通話をかけてしまったわけではないらしい。


「…………もしもし?」


 迷った挙句、電話に出てみることにした。いきなり通話をかけてきた理由はわからないものの、出ても悪いことにはならないだろう。


『お、出た出た。やっほー、元気ー?』


「いきなり通話かけてくるなんてどうし『ちょっと(すず)!携帯返しなさい!』『もー、お姉ちゃんうるさい!向こうの声聞こえない!』……おっけー、今のでなんとなく分かったわ」


 電話に出た途端騒々しい言い争いが聞こえてきて、危うく左耳の鼓膜が無くなるところだった。すぐに携帯を耳から離し、通話の音量を落としてから改めて耳に当てる。

 とはいえ、今のでなんでいきなり夏見が通話をかけてきたのかは理解できた。どうやら通話をかけてきたのは夏見ではなく、鈴と呼ばれた夏見の妹?なのだろう。


『うるさいなぁ、お姉ちゃんが情けなくうじうじジメジメしてるからじゃん』


『だからって勝手に電話していい理由にはならないでしょ!』


「……なぁ、俺はいったいなにを聞かされてるんだ?」


 喧嘩するのはいいけど、気まずいから通話を繋いだままやらないでほしい。


 ――携帯越しの姉妹喧嘩を聞かされること数分。


『はいはい、お邪魔虫は消えますよ〜だ。後はお姉ちゃんの好きにしたらいいよ』


『ちょっと鈴!まだ話は終わって……!あぁもう!……えっと、その……ごめんなさい朝木くん。妹がいきなり電話してしまって……』


「いや……まぁ、なんか色々あったのは聞いてたから分かるし、気にすんな」


『本当にごめんなさい……』


 携帯越しに聞こえる夏見の声は明らかに沈んでいて、どうしても普段学校で見かける明るい様子とはかけ離れた印象を受けてしまう。


『あ、えっと、それで……傘のお礼の事なんですが……』


「そのことなら気にしなくていいって返信したろ?」


『けど……』


 どうやらあんまり納得してくれていないようだ。本当に気にしなくていいんだが……あ、そうだ。


「じゃあさ、お礼の代わりに1つお願いがあるんだけどいいか?」


『!はい!もちろんです!なんでも言ってください!私が出来る事なら何でもしますよ!』


「傘貸したぐらいで大袈裟だな……明日――」


 

『――そんなことでいいんですか?』


「あぁ。けど嫌だったら全然断っていいから」


『いえ、大丈夫です。むしろそんな事でいいんですか?』


「そんな事程度のことしかしてないからな」

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