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蒼白のリヴァイアサン  作者: 黒木箱 末宝
海洋冒険編
4/33

ファーストチェイス

「──対象が錯乱、落ち着かせます。対象を願います」

「……!」


 シエラは流児を抱きかかえて落ち着かせようとし、ガザミに何か指示を出した。


「……!!」


 ガザミはハサミを掲げて回遊魚の中からカツオを一匹を呼び出し、その背に乗った。そして二人の傍で泳ぎ続けるよう指示を出すと、後ろを向いて自身の戦いを始めた。


 先ずは化け物のスピードを落とさねば激突してしまう。総判断したガザミは左のハサミを掲げ、怪物に向かって振り下ろした。すると、それによってシイラが動き出した。

 シイラはそのまま後ろを向くと、化け物へと突撃。その開きっぱなしの口へと飛び込んで行った。


「■■■■~~~~!?」


 自身の速度とシイラの速度、更に互いの質量が合わさった突撃は、それだけでも十分な効果を発揮する。

 だがそれだけではない。突撃して尚その身を保ったシイラが、そのまま身体を振り(えら)に自身を差し込んだのだ。


 鰓とは、鰓を持つものにとって呼吸器であり、酸素を取り込むための肺の様な役割の重要な器官。血も多く通う部分でもあり、鰓を持つものにとっての弱点でもある。


「■■■■……!!」


 そんな重要器官に異物が挟まってしまえば、怪物も獲物を追い掛けている場合では無いとスピードを落として対処する。

 怪物は泳ぐスピードは落としたものの、追跡は諦めていない様子。鰓に挟まるシイラを除去し終わると、再び加速して来る。


「……!!」


 ならばとガザミは両方のハサミを下に向けると、怪物に向かって振り上げた。下方を泳いでいたサワラが反応し、怪物へと向かう。


「■■■■……!」


 怪物は相手の抵抗から学んだのか口を閉じる。しかしサワラ達にされた命令は突撃ではなかった。

 サワラ達は、捕食時に見せる瞬間時速一〇〇キロメートルの速度で怪物に噛み付いたのだ。


「■■■■~~~~!??」


 サワラの牙が怪物を貫く事はできない。しかし、表皮を撫でる不快感や、目や鰓を狙われた時の事を考えてしまったのか、怪物は怯み加速を止めてサワラを引き剥がそうと暴れ出す。


「──あと少しで到着です。このまま対処をお願いします」

「……!」


 シエラの言葉にガザミは頷く。そしてこのまま畳み掛けるため、ガザミはハサミを上に掲げ怪物へと振り下ろし、《《とっておき》》の存在へと指示を出す。


「■■■■~~……!!」


 サワラを全て叩き落とした怪物は、今度こそはと加速しようとした。

 しかし、視界を覆う《《白いモヤ》》と《《オレンジ色の粒》》が覆い隠したため出鼻を挫かれてしまう。

 視界を覆うそれらを鰭腕を振るう事で散らし、事の元凶を探し、見付けた。


「──■■■■~~ーーーー!!!!」


 そこに居たのは、その身を寄せ合って泳ぎ《《放精》》と《《放卵》》をしている鮭の群れだった。

 あまりにも巫山戯た行為をされた怪物は、怒りから咆哮を上げる。

 船の汽笛とも鯨の怒声とも取れるその声は、口や鰓蓋を大きく開けて放たれる。興奮したためか、鰓が赤く大きく膨れている。


 視点は鮭に向けられており、弱点は剥き出し。そこを狙って《《とっておき》》が突撃する。


「■■ッ!?」


 怪物は初めて鰓から痛みを感じた。見ると、興奮し膨れ上がった鰓を、一匹の魚が噛み付いていたのだ。


 バラクーダ。鋭い牙を持つ大型の魚だ。性格は獰猛で、自身と変わらないサイズの魚にも喰らいつき、その牙で真っ二つにして捕食することもある。


「■■■■ーーーー!!!!」


 自身を傷付けた存在に、怪物が怒りの声を上げる。

 すると、怪物の身体を深紅の光が覆い始めた。その光はバラクーダの牙を防ぎ、口や鰓への攻撃を妨害する。

 やがて深紅の光が膨れ上がると、爆散。光弾が周囲にバラまかれる。

 光弾は周囲にいたバラクーダを撃ち砕き、鮭の群れをバラバラにすると、その一つの光弾が流児達に向かって飛んできた。


「……!!」


 ガザミは即座に乗っていたカツオに命令を飛ばしてジャンプ。シエラへと飛び移る。

 光弾をカツオがその身を盾にして防ぐ。しかし、その際に発生した衝撃波が流児達を襲った。


「うわあああっ!?」

「──対衝撃波姿勢」

「……!?」


 大きな衝撃波と、それによって発生した激流に巻き込まれる流児達。その衝撃波や激流に揉まれ、流児はシエラとはぐれてしまった。それによって、流児は更に酷いパニック状態に陥ってしまう。


「ああ、手がッシエラーー~~!?」


 遠ざかるシエラ。泳ぐガザミ。冷える海。近付く深淵。轟く怪物の咆哮。


 恐怖が限界を超えたのか、ついに叫び声すら上げられなくった流児は、そのまま意識を落としてしまった。

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