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蒼白のリヴァイアサン  作者: 黒木箱 末宝
海洋冒険編
17/33

真の主として

「■■■■■■■■ーーーー~~!!」


 海を裂くような叫び声を上げ、墨煙幕や海洋生物達を薙ぎ払うヴォズマー。


「■■ーー!! ──■■!?」


 自身を邪魔をする物が無くなり、勝鬨の咆哮を轟かせるも、海底から蒼き光を身に纏い接近する流児を見付け、動揺する。


「……■■■■ーーーー!!!」


 六つの満月の様な瞳がそれを睨み付け、脅威と認識を改める。ならば躊躇は要らぬと、直接流児を叩き潰すため、ヴォズマーも海を駆ける。


「オオオッ!」

「■■■ッ!」


 激突する二人の拳。

 その衝撃で海が割れ、水の無い空間が生まれた。

 しかし、それも一瞬のこと。押し退けられた海が、元の形に戻ろうと押し寄せる。


「だああああっ!!」

「■■■■■ーー!」


 互いの腕が引っ張られる 。

 だがその引力を利用し、流児はドロップキックを、ヴォズマーは尾鰭を敵に叩き付ける。


 互いにぶつかり合い、弾き跳ばし合い、何度も何度も殺意を押し付け合う。


「ドリャアアッ!!」

「■■!?」


 深紅の光による攻撃を避け、弾き、踏み台の様に利用して、流児は遂にヴォズマーへ一撃を食らわせた。


「よしっ──ぐおっ!?」

「■■■■ッ!!」


 しかし、一瞬気の緩んだ隙を突かれ、流児はヴォズマーに捕まってしまう。

 ヴォズマーは再びし深紅の光線を放つべく、その喉元に光を集束させる。


「そんなものーッ!!」


 ヴォズマーも全力だが、流児もまた全力。腕に光を集め、光線を弾き返してやると言わんばかりに交差させる。


 二つの光がぶつかり合う──その時だった。


 流児達の身体を、複数のクリック音が打つ。それに、流児は覚えがあった。イルカのとは違う、強く大きなその音に。


「この音……この強さ……まさかッ!?」


 流児は音の聞こえた方に交差した腕を向けた。


「■■■■! ■──!?」


 それを愚かな行動だと嘲笑するような雰囲気を漂わせるヴォズマーだったが、次の瞬間、その横っ面を衝撃波が穿った。


「ぐううっ!? やっぱりあれは、《マッコウクジラのクリック音》。狙っていたのか……!」


 軽くしびれる腕を振りながら、気を跳ばしているヴォズマーの指を抉じ開け、急いで離れる。


 何せ、まだクリック音が聞こえているからだ。


 音の聞こえる方向を見ると、そこには四匹のマッコウクジラが居た。そして、その頭をピッタリとヴォズマーへと向けている。


「まさか──退避ー!!」


 流児は即座に、ヴォズマーから全力で距離を取る。


「■■──?」


 ヴォズマーの意識が戻る。しかし、もう避けられない。

 その直後、四匹のマッコウクジラによる、全力の超音波攻撃が放たれた。


「■■■■ッ!!?」

「ハハッ……怖わ~……」


 ヴォズマーの全身を撃つ超音波のビーム。

 体がぶれた様に見える程の衝撃により、ヴォズマーはピクピクと震え、しかし目をギョロギョロと動かしている。

 何とヴォズマーは、超音波がぶつかる瞬間に全身に力を込めて耐え、意識をギリギリまで保っているのだ。


「今だ、オオオッ!」


 その隙を逃さず、流児は全力全開の右ストレートをヴォズマーの鼻っ面に叩き込む。


「■■!? ────」


 ヨクトマシンのサポートによる、強化されたその拳による一撃で、ヴォズマーの意識を完全に奪った。


「シエラ、いま助けるッ!」


 その隙に、仰向けになって浮かぶヴォズマーへと取り付き、エビやカニ達がつけた傷から喉袋を破り、シエラを救いだした。


「──流児!」

「シエラ!……良かった、無事だ……」


 助け出したシエラを、歓喜余って抱き締める。

 そこで流児は漸く気付いた。シエラと別れたくない、シエラと共に生きたいと言う、己の願いに。


「……シエラ、君に伝えたいことがある……」

「──何でしょうか?」

「シエラ、俺は……君が好きだ。君がどんな存在でも……誰のものであったとしても……! 俺は…君を愛してるッ……! 人生を、《共に生きたい》と思ってる……!」

「──本登録が完了しました。これから《も》よろしくお願いいたします、マスター!」


 シエラは流児の言葉に頷いた。

 すると、マリンブルーの瞳が蒼色へと変わり、シエラが自ら流児に抱き付いた。


「……ッ! シエラ……!」


 光が照らす深い海。抱き合う二人を祝福するかの様に魚達がその周囲を舞い泳ぐ。


「──■■■■ーー……!」


 しかし、二人を祝福しない者が目を覚ました。


「……ヴォズマー……」

「──害意を感知しました」


「■■■■■■ーーーーーー!!!!」


 巨大な異形が身を起こす。

 三対六つ、暗夜に浮かぶ満月の様な瞳が、抱き合う二人を睨み付ける。二人に激怒する様な、悍ましい絶叫が轟いた。

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