ここで働かせてくださぁい!
なんとか3話までかけました。次回もよろしくお願いします。
「いきなり逮捕ってどういうことですか!?」
「ああごめん、流石に冗談だよ」
「じゃなきゃ困りますよ!」
騎士団本部の団長室でルーカの報告を聞いた団長が開口一番放ったセリフに2人は思わず驚いた。流石に異世界云々の話をいきなり信じてもらえるとは思わなかったが、まさかいきなり逮捕なんて言われるとは思いもしなかった。報告を終えたルーカに部屋に呼ばれて入った時に見た団長の初印象は細い目に短い銀髪、穏やかな笑い方と胡散臭さマックスだったが、意外と愉快な人物のようだ。
「とりあえず改めて自己紹介をしよう。私がこの騎士団「エンシェントロン」の団長、リザード・オーウェンだ」
「あ、はい。初めまして。寺野 竜司です」
「君が異世界から来たという話だが、流石に「そうか」と納得はできない。だが、私は信じてもいいと思っている」
「「え??」」
「これを見てくれ」
そう言って団長は本棚から古い本を1つ取り出し、2人に見せた。そこには何やら文字が書いてあったが、異世界から来た竜司には全く読めない。だがルーカはそれを見て驚いていた。
「え、異世界から来た男!?団長、これって…」
「今から約300年前、別の世界から来たと話す男がとある国にやってきてさまざまな知識をその国に伝えたという文献だ。他にも似たような話は実は世界中の文献にある」
自分たちの世界の神隠しや都市伝説に近い話なのかと竜司は思った。
「だけどこれをそのまま鵜呑みにするわけにもいかない。だから君には一時的にうちの預かりになってもらう」
「それはこっちとしてはありがたいですけど…そちらに利がなくないですか?」
「君はダイノスが好きみたいだね?」
「ダイノス?」
「君が『キョウリュウ』と呼ぶ彼らだよ」
そう言って団長は窓の外にいる恐竜たちを指差した。そこには小さな子供のブラキオサウルスが子供たちと一緒に遊ぶ微笑ましい光景があった。
「私たちの騎士団はダイノス達と一緒に戦うダイノスナイト達が大勢所属している。だがダイノス達の世話は何人でも人手が欲しくてね。ぜひ君に手伝ってほしい。衣食住は保証するし、お給料もだそう」
「そんなの願ってもないですよ!ぜひやらせてください!」
「そうか。とても大変だけど大丈夫かい?」
「そうよリュージ。毎年何人もの人達が辞めるほど過酷なんだよ?」
「いいや、それでもやりたいんだ!俺にとってこれは天職だ!」
竜司にとって恐竜は夢であり、憧れの存在だった。そんな恐竜と目の前で触れ合いながら仕事ができるなんて、こんな嬉しいことはない。おそらくやるなと言われてもやるだろう。そのぐらいの気迫が竜司にはあった。なんなら背中に炎が見えるほどである。
「よし、君の熱意はよくわかった。ぜひよろしく頼むよ。ルーカ、彼を案内してくれるかい?」
「え、私ですか!?」
「君が拾ってきたんだろう、最後まで責任持たなきゃ」
「そんな犬みたいに…」
そんなことを言っているが、ルーカ自身満更ではないようで、メラメラと目を燃やしている竜司を見て笑っている。自分たちにとって何の珍しさもないダイノスにこんなに熱くなっている人が面白いのだ。
「わかりました。とりあえずダイノス達の畜舎に案内しますね」
「そこならブリーダーもいるだろうしね。よろしく頼むよ」
「はい、では失礼します。リュージ、行くよ」
「失礼します!ありがとうございました!」
「うん、頑張ってね」
そう言って部屋を出る2人を見送り、団長は椅子に座り込んだ。
「異世界から来た男、か…君はこの世界に何をもたらすんだろうね?」
胡散臭い感じで言っているが、言っている言葉は言葉そのままの意味である。なんの含みもないのだ!
団長は胡散臭い雰囲気しかない人ですが、一応人格者です…多分ね。
次回もお楽しみに!