タイムスリップ?いいえ、イセカイトリップです。
なろうでの処女作です。よろしくお願いします。
とある博物館。小学校の見学ツアーできていた子供達は大小様々な恐竜の化石にワクワクしていた。国内でも最大級の化石の保有数を誇る博物館は毎月のように子供向けのツアーが企画され、平日でも人が殺到している。
「お兄さーん、この恐竜なんていうの〜?」
「こいつはな、フタバスズキリュウっていうんだ。日本で発見されたんだぜ」
質問に答えたのは、博物館で案内人のアルバイトをしている寺野 竜司。幼い頃から恐竜が大好きで大学でも地層や恐竜の研究をしながら仕事でも恐竜に関わっている、まさに恐竜に人生を捧げた青年である。今日も本来休日だったにも関わらず志願してツアーガイドをしているのである。
「お兄ちゃん、こっちも教えて!」
「こら!すみません、子供達がご迷惑を…」
「全然!むしろ楽しいですよ」
「先生早く!」
「おいおい、俺は先生じゃなくてガイドだぞ〜」
「ちょっとみんな!」
「心配ありませんよ」
竜司が引っ張られ先生がオロオロしていると、後ろから館長が現れた。竜司をアルバイトとして採用したのは他でもない館長なのである。
「彼なら大丈夫。毎日のようにここに来て恐竜に目を光らせているような子ですから。今だって子供達より楽しんでますよ」
「はぁ…」
「先生もどうぞ楽しんでください。ほら、呼んでますよ」
「田中先生〜!こっち来て、スッゲーでっかいキリン!」
「ははは、キリンじゃなくてブラキオサウルスだよ!」
「ね?」
「ふふっ、そうみたいですね」
(あの時、君を誘って良かった…)
**********
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
「はい、ありがとうございました。また来てね〜!」
「じゃあみんな、バスに行くよ〜!」
「「「「「は〜い!!」」」」」
「お、お〜い!!」
ツアーが終わり、みんなが駐車場でバスに乗ろうとしていると、横から突然猛スピードで車が子供達に向かって走ってきた。どうやらブレーキが壊れているらしく、運転手が「逃げてくれ〜!」と叫んでいる。このまま突っ込めば子供達も先生も危ない。
「「「「きゃああああ!!!」」」」
「あぶない!」
「え、ガイドさん!?」
竜司は思わず子供達を押しのけ、車の前に出た。そのまま車はバスに直撃し、彼はその間に挟まってしまった。先生や館長、運転手が一斉に集まり車をどかそうとするが、なかなか動かない。
「ガイドさん!ガイドさん!」
「竜司くん!」
(あーやばい、意識が遠くなってきた。俺死ぬのかな…)
徐々に遠のく意識の中、竜司は走馬灯を思い浮かべていた。かつて、竜司は捨て子として孤児院に預けられ、物静かな性格で友達も少なかった。しかし偶然尋ねた館長が恐竜について教えると一気に虜になった。それ以来将来は恐竜の仕事をするために高校、大学も奨学金で通うために猛勉強をした。今ではかつての自分のような子たちに恐竜を好きになってもらうために毎日少年のような目で研究していた。
(それがこんな終わり方か…もっと恐竜のこと、研究したかったな…)
享年22歳。寺野竜司はたくさんの人に囲まれながら短い人生に幕を閉じた。
**********
(あ、あれ?)
しばらくして、竜司の意識はなぜか再び覚醒した。間違いなく意識を失い死んだと思っていたが、なぜかまた目が覚めたのだ。いや、厳密にはまだ目を開けていない。顔の近くに生暖かい風を感じているので、怖くて目が開けられないのだ。
(もしかして猛獣でもいるのか?でもさっき車に…とりあえず目を開けてみよう)
そう思って目を開けると、なんと目の前にいたのは…
「はあああああ!?!?!?」
トリケラトプスである。現代にはいるはずのない恐竜、それが顔の目の前で鼻息を吹いていた。思わず竜司は大声で叫んでしまう。
(な、なんでトリケラトプス!?恐竜!?もしかして俺、タイムスリップした!?あの車はデロ◯アンだったのか!?)
なんてことを一瞬のうちに考えていると、トリケラトプスの上の方から女の子が顔を出した。褐色の肌に似合わない理知的な顔立ちの美人で、騎士のような格好をしている。
「どうしたのリック?何かいた?」
「え、人ぉ!?」
本日2回目の絶叫。竜司は自分の状況が読めず、喉が枯れる勢いで叫んだ。
あまりなろうで見たことのないジャンルに挑戦してみました。ゆったり更新したいです。よろしくお願いします。