第七回 12
そう言って賈蓉はそそくさと出て行くと、一人の少年を連れてきた。宝玉はその少年を見るや、一瞬で心を奪われてしまう。
宝玉より少し痩せたその少年は、もじもじしながら熙鳳にゆっくりとお辞儀をした。
「なんて真っ白で奇麗な子! まるで女の子みたいね」
あけすけに熙鳳は言い、手を取りながら自分のそばに座らせた。
熙鳳は柘榴の実が弾けるように笑いながら、
「あんたの負けね」
と宝玉を小突く。宝玉は苛立つでもなく、恥じ入るでもなく、ただ呆けたようにこの美しい少年を見つめていた。
「今はいくつ?」
「今年でと、十になります」
熙鳳は宝玉と少年を交互に眺め、
「あら、あらあらあら……」
と言いながら、宝玉の肩をゆさぶる。
「あなたと同じ歳じゃない! じゃあ、今はどんな書を読んでらっしゃるの?」
「四書はだ、だいたい読みましたから、今は詩を読み進めております」
「きょうだいは?」
「あ、姉が一人……」
「あなたの学名を教えてちょうだい」
「秦鐘と申します」
秦鐘は再び顔を赤くした。
「しんしょう」と宝玉は彼の名を心の中でつぶやく。宝玉が秦鐘の美しさにひたっている間に、周りが慌ただしくなってきていた。
「奶奶が初めてお会いになるのに、何か贈り物をしないといけないのではないかしら?」
豊児が他の丫鬟に問うと、
「そうよね。平児姐姐にご相談してきましょう」
そう言いながら、二人はこっそりと房を退出すると、外に控えていた平児に贈り物を何にしたらよいか尋ねた。
「蓉の奶奶とはとても仲がよろしい間柄。ありきたりの贈り物ではよくないわ」
平児がそう言うと、豊児は、
「じゃあ、姐姐はどのような贈り物がよろしいと思われますか?」
「これなんてどう?」
平児は行李から一反の反物と、「状元及第」の刻印の入った二個の小さな金の錁子を取り出し、使いに渡した。
使いからそれを受け取った熙鳳は「こんなもので悪いけど」などと言いながらそれらを渡した。秦氏は、反物を丫鬟に渡し、親指と人差し指で金の塊をつまみ上げ、じっくり眺めると、
「まあ、状元及第だなんて! ありがたく頂戴いたします。秦鐘、鳳の姐姐が科挙に一等で通るようにと励ましてくださっていますよ」
秦鐘は「はい、頑張ります」と小さな声で答え、人々から和やかな笑い声が起きた。




